日本の鉄道といえば、複線で列車が行き交うイメージが強いのではないでしょうか。しかし、実は単線でありながら、驚くほどの高頻度運転を実現し、地域住民の生活を支えている路線が数多く存在します。今回は、そんな日本の「隠れた実力派」ともいえる単線鉄道の魅力に迫ります。
箱根観光を支える”登山電車”:小田急箱根鉄道線
箱根への玄関口、小田原駅から風光明媚な山岳地帯を抜け、強羅駅へと至る小田急箱根鉄道線。通称「箱根登山電車」として親しまれるこの路線は、観光路線としての役割を担いながら、単線区間での高頻度運転を実現しています。特に小田原~箱根湯本間は、土休日には1日68往復もの運行本数を誇り、特急ロマンスカー「はこね」も運行。箱根湯本駅を基準に最も本数の多い13時台には、なんと7本もの列車が発着し、最短運転間隔はわずか3分。山岳区間の箱根湯本~強羅間でも1日54往復、最短運転間隔14分と、観光客の利便性を高めています。
小田急ロマンスカー「はこね」
広島市近郊の足:JR西日本 可部線
広島市中心部と北部を結ぶJR西日本 可部線。一度は廃止された区間が電化復活を果たすという稀有な歴史を持つこの路線は、横川駅とあき亀山駅を結び、地域住民の生活を支えています。横川~緑井間では、1日70往復、最短運転間隔8分という高頻度運転を実現。通勤・通学の足として、なくてはならない存在となっています。
住宅街を走るローカル線:こどもの国線
長津田駅とこどもの国駅を結ぶ、全長わずか3.4kmのこどもの国線。当初はこどもの国へのアクセス路線として開業しましたが、恩田駅での列車交換が可能になった2000年以降、通勤路線としての役割も担うようになりました。現在では1日72往復、ラッシュ時には毎時6本、最短11分間隔で運行されており、沿線住民の利便性を向上させています。鉄道アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「こどもの国線は、短距離路線でありながら高頻度運転を実現した好例と言えるでしょう」と述べています。
海と街を繋ぐ:江ノ島電鉄線
藤沢駅と鎌倉駅を結ぶ江ノ島電鉄線は、風光明媚な海岸線を走り、観光客にも人気の路線です。道路上を走る併用軌道区間も持ちながら、江ノ島~極楽寺間では1日77往復もの高頻度運転を実現。最も多い時間帯では毎時5本、最短14分間隔で運行されています。
江ノ島電鉄の風景
福岡都市圏の動脈:JR九州 篠栗線
桂川駅と吉塚駅を結ぶJR九州 篠栗線は、博多~黒崎間で「福北ゆたか線」の愛称で親しまれています。1日78往復もの列車が運行され、特に篠栗駅の8時台には博多方面へ1時間7本もの列車が発着。最短運転間隔はわずか6分と、都市圏の動脈として重要な役割を果たしています。
地方鉄道の雄:遠州鉄道線
新浜松駅と西鹿島駅を結ぶ遠州鉄道線は、地方鉄道でありながら、全18駅中16駅に交換設備を設けることで、高頻度運転を実現しています。早朝深夜を除き、毎時5本、最短12分間隔で運行されており、車両デザインの統一性も特徴的です。
驚異の輸送力!湘南モノレール江の島線
大船駅と湘南江の島駅を結ぶ湘南モノレール江の島線は、懸垂式モノレールという独自の方式を採用。平日には湘南深沢~湘南江の島間で140往復、大抵の時間帯で毎時8本もの列車が運行されています。最短運転間隔は7.5分と、高頻度運転でありながら、富士見町~大船間では混雑率が163%に達するなど、大きな輸送需要を抱えています。
高頻度運転が支える地域社会
今回ご紹介した路線以外にも、JR相模線など、単線区間で高頻度運転を実現している路線は数多く存在します。これらの路線に共通するのは、大都市近郊に位置し、地域住民の生活に欠かせない存在となっている点です。単線という制約を克服し、高頻度運転によって地域社会を支える日本の鉄道技術は、世界に誇るべきものと言えるでしょう。