ハンガリーで中国製EVの躍進が目覚ましい。一体何が起きているのか?本記事では、中国EVメーカーのハンガリー進出の背景、その現状と今後の展望、そしてEUへの影響について詳しく解説します。
中国EVメーカー、ハンガリーに続々進出
ハンガリーのブダペストにあるBYDの販売店で展示されているEV
近年、中国の電気自動車(EV)関連企業が、EU加盟国であるハンガリーに次々と進出しています。その背景には、オルバン首相の親中路線と、ハンガリー政府の積極的な誘致策があります。
BYD、欧州初工場を建設
建設中のBYDのEV工場
中国EV大手BYDは、2025年後半の稼働を目指し、ハンガリー南部セゲドに欧州初の工場を建設中です。この工場は数千人の雇用創出が見込まれ、地元経済の活性化に大きな期待が寄せられています。セゲドのショッピングモールで働く20代の男性は、「最先端のEV生産によって街が活気づく」と期待を込めて語りました。
CATLも工場建設、投資額は2兆円超え
BYDだけでなく、中国車載電池大手のCATLも東部デブレツェンに新工場を建設中で、2025年の稼働を目指しています。ジェトロブダペスト事務所によると、2020年以降の中国企業によるハンガリーへの投資は、EV関連を中心に38件、総額160億ユーロ(約2兆5800億円)を超えています。
中国製EVの販売台数も急増
中国製EVのハンガリー国内での販売台数も増加傾向にあります。BYDは2023年10月に現地の販売代理店2社と契約を結び、販売台数は2023年の17台から2024年には1437台に急増しました。BYDの販売代理店の責任者、ビキシュ・ミクロス氏は、「ハンガリー国内に工場を建設し、政府との関係も良好であることが成功の要因」と分析しています。自動車評論家の田中一郎氏(仮名)も、「ハンガリーは地理的にヨーロッパの中心に位置し、EU域内へのアクセスが容易であることが、中国EVメーカーにとって大きな魅力となっている」と指摘しています。
ハンガリーの戦略とEUへの影響
ハンガリーのオルバン首相と中国の習近平国家主席は緊密な関係を築いており、2024年5月の会談ではEV関連を含む経済協力の強化で合意しました。ハンガリー政府は、EV電池製造大国を目指しており、中国企業への多額の補助金供与など、積極的な誘致策を展開しています。
EUの追加関税と中国の戦略
EUは安価な中国製EVの流入を防ぐため追加関税を導入しましたが、中国企業はハンガリーを拠点としてEU域内への輸出体制を構築しつつあります。この動きは、EUの自動車産業に大きな影響を与える可能性があり、今後の動向が注目されます。
まとめ
ハンガリーへの中国EVメーカーの進出は、ハンガリー経済の活性化に貢献する一方、EUの自動車産業への影響も懸念されています。中国企業はハンガリーを戦略的な拠点として活用し、EU市場への進出を加速させています。今後の中国EVメーカーの動向、そしてEUの対応に注目していく必要があります。