「恒産なくして恒心なし」という言葉もあるように、精神面での安定や道徳心は経済的な安定があってこそと思われています。実際、お金を稼ぐ方法はよくクローズアップされ、需要もあるようです。
しかし、「お金はいくらあれば安心」となかなか言い切れるものではありません。言い換えれば、お金を手に入れることばかりに気を取られていると、お金にまつわる数々の不安は一向に解消されない……?
人生に行き詰っている、老後の資金が大変、人と比較されるのがつらい、職場の人間関係に困っている……尽きることのない悩みに私たちはどうやって対処していけばいいのか? 「仏教的アプローチで人生を経営する」という新しい生き方を提案する書籍『仏陀経営』(愛葉宣明・著)より、一部を紹介します(全3回中の第2回)。
■お金はどう稼ぐか、ではない
人生において多くの時間を使うことになるのが仕事です。どうして大切な時間のほとんどを使ってまで仕事をするのかといえば、おそらく「お金を稼ぐため」でしょう。
「いかにお金を稼ぐか?」は生涯にわたって大切なテーマであり、誰でもお金を稼ぐことに関心を持っているように思います。実際、お金を稼ぐ方法と検索すればたくさんヒットしますし、メディアではひんぱんに特集が組まれ、お金の稼ぎ方を教えてくれる書籍もたくさんあります。
一方、「稼ぎ方」に比べると、「手に入れたお金をどう使うべきか?」について言及したものはそれほど多くないようです。
そんなことは、わざわざ聞かなくてもわかっている? 毎日を生きていくため、欲しいものを買うため、子どもの教育のため、自身の老後のためなど、お金の使い道なんていくらでもあります。
しかし、『死ぬ瞬間の5つの後悔』(ブロニー・ウェア・著、仁木めぐみ・訳、新潮社、2012年)によると、死を覚悟した人に共通する後悔の中に「働きすぎなければよかった」はあっても、「もっとお金を稼ぎたかった」というものは入っていません。