日本の食卓を守るために:米価高騰の真の意味を考える

日本の主食であるお米の価格高騰が続いています。農林水産省は備蓄米を放出するなど対策に乗り出していますが、これは一時的な解決策に過ぎないかもしれません。今回の米価高騰は、私たちに日本農業の深刻な現状を突きつけていると言えるでしょう。

なぜ米価は高騰するのか?生産者の苦悩

熊本県阿蘇の田園風景熊本県阿蘇の田園風景

昨年の夏以降、米価は上昇を続け、ついに農水省が備蓄米の放出に踏み切りました。しかし、現在の玄米60キロあたりの価格は1万8000~2万2000円。40年前と同じ水準に戻ったとはいえ、それまでの長きに渡り、米農家は生産コストを下回る価格で米を作り続けなければなりませんでした。

農業資材や肥料、農薬の価格は高騰する一方、農産物の価格は上がらず、多くの農家が赤字経営を強いられています。生活すらままならない状況では、若者の農業離れは加速するばかりです。

高齢化が進む日本の農業:未来への不安

日本の農業従事者の6割は70歳以上、2割が60代で、40歳未満の若手はわずか5%。このままでは日本の農業を誰が支えていくのでしょうか。農業法人も人手不足や資材高騰に苦しみ、規模拡大どころか現状維持すら困難な状況です。

茶碗一杯の米の価値:消費者の意識改革を

炊きたてのご飯炊きたてのご飯

私たち消費者は、普段何気なく口にしているご飯の価格について、真剣に考えたことがあるでしょうか。10キロ6000円の白米で炊いたご飯は、茶碗一杯あたり約40~50円。この価格が高すぎる、と感じるでしょうか?自動販売機の飲み物の値上げには目くじらを立てるのに、食料の価格には無頓着になりがちです。

食の安全保障:持続可能な農業への道

農産物の価格は、農家自身が決めることはできません。市場の需給バランスに左右されますが、赤字でも農業を続けてきた生産者の努力を、私たちは理解しているでしょうか。流通業界も、生産基盤が弱体化していく日本農業の現状をどう捉えているのでしょうか。

70代の農家が引退していく今後10年、もし食料輸入が困難になったら、米価高騰だけでは済まない事態も想定されます。「食の安全保障」の観点からも、持続可能な農業を実現するために、私たち一人ひとりが真剣に考え、行動していく必要があるのではないでしょうか。

今こそ国民的な議論を:未来の食卓のために

食料自給率の低い日本にとって、農業は国の根幹を支える重要な産業です。若者が農業を職業として選択できるよう、生産コストを賄える適正な価格設定、そして持続可能な農業のあり方について、国民的な議論が必要です。今回の米価高騰は、その議論を始める絶好の機会と言えるでしょう。農水省には、備蓄米の放出という一時的な対策だけでなく、日本の農業の未来を見据えた長期的なビジョンを示してほしいと願います。