ウクライナ紛争の停戦に向けた新たな動きとして、米国が仲介役となり、ロシア、ウクライナとそれぞれ会談を行い、黒海における安全な航行の確保で合意に至りました。しかし、ロシアは合意履行の条件として西側諸国による制裁解除を求めており、予断を許さない状況が続いています。
米露ウクライナ、黒海航行の安全確保で合意
サウジアラビアで8月23日から25日にかけて行われた会談で、米国、ロシア、ウクライナは、黒海における商船の安全な航行を確保し、軍事目的での商船の使用を禁止することで合意しました。ホワイトハウスの発表によると、3カ国はさらに、相互のエネルギー施設への攻撃を30日間中断することで合意。この合意履行を支援するための第三国の仲裁についても、ロシアとウクライナは歓迎の意向を示したとされています。ロシア大統領府も同様の声明を発表し、合意内容を認めています。
プーチン大統領とゼレンスキー大統領
ロシア、制裁解除を合意履行の条件に
この合意は、黒海における緊張緩和に向けた重要な一歩となる可能性を秘めています。しかし、ロシアは合意履行の条件として、農産物・肥料輸出に関連した西側諸国による制裁の解除を要求。具体的には、ロシア国営農業銀行やロシア船舶、食品生産・輸出業者に対する制裁の解除、国際決済システムへの再接続などを求めています。
国際的な食料安全保障の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「ロシアの農産物輸出は世界市場において重要な役割を担っている。制裁解除が実現しなければ、合意の効果は限定的になるだろう」と指摘しています。
黒海穀物協定の行方も焦点
今回の合意は、2022年7月に国連とトルコの仲裁で締結された黒海穀物協定の再開にも影響を与える可能性があります。ロシアは自国産の食料・肥料輸出の保障が不十分だとして、2023年7月に協定を破棄。ウクライナからの穀物輸出が滞り、国際的な食料価格高騰の一因となっていました。
プーチン大統領とゼレンスキー大統領の握手
今後の展望は不透明
米国はロシアの要求に一定の理解を示していますが、欧州諸国からは対ロシア制裁の弱体化を懸念する声も上がっています。ウクライナのゼレンスキー大統領も、米国の対応の詳細が不明瞭であることに懸念を示しており、今後の展開は予断を許しません。 黒海における緊張緩和と国際的な食料安全保障のためにも、関係各国による更なる協議と協力が求められています。