日本の年金制度:誕生秘話と官僚たちの思惑

日本の年金制度、誰もが関心を持つこの仕組み。実は、その誕生には驚くべき背景が隠されています。今回は、軍人や官僚の特権から始まった年金制度の成り立ちと、それを取り巻く官僚たちの思惑に迫ります。

明治時代の年金:エリートのための特権

日本の年金制度は、明治時代に軍人や官僚のための恩給制度として産声を上げました。その後、教師や警察官など、公務員向けの年金制度が次々と整備されていきました。つまり、当初の年金は、いわば一部のエリート層のための特権だったのです。一般国民が利用することは想定されていませんでした。

明治時代の軍人明治時代の軍人

第二次世界大戦:転換期を迎えた年金

第二次世界大戦中の総力戦体制下、戦費調達やインフレ抑制を目的として、民間労働者も公的年金制度の対象に加わりました。これが、現在の厚生年金制度の始まりです。保険料の徴収には、同じく戦時中に始まった源泉徴収制度が利用されました。そして、戦後の1959年、国民年金法が成立し、自営業者や農家なども含めた国民皆年金制度が実現しました。

戦後日本の年金:迷走の始まり

戦時中に急造された厚生年金制度は、戦後も存続されることになりました。これが、後の年金制度の迷走につながっていくのです。社会保険料は上昇の一途をたどり、年金運用を巡るスキャンダルも相次ぎました。

厚生年金を作った官僚の本音

初代厚生省厚生年金局年金課長、花澤武夫氏の回顧録には、当時の官僚たちの驚くべき本音が赤裸々に綴られています。膨大な年金資金の運用について、花澤氏はこう語っています。

「この資金があれば一流の銀行だってかなわない。厚生年金保険基金を作り、その理事長は日銀総裁に匹敵する力を持つ。厚生省のOBの天下り先にも困らない。」

省益を優先し、天下り先を確保することに腐心する、官僚の典型的な思考が露呈しています。

福祉施設建設の裏側

花澤氏はさらに、年金資金の流用についても言及しています。

「二十年もかけて年金を支給する間、何もしないで待っているのは馬鹿げている。すぐに福祉施設を建設すべきだ。そのためには強力な団体を作り、政府の事業を肩代わりさせる。」

実際、戦後には年金福祉事業団が設立され、福祉施設の建設が進められました。しかし、この事業団は厚生省の天下り先となり、グリーンピアなどのリゾート施設への資金流用という問題も引き起こしました。

現代社会への教訓

年金制度の誕生と発展の歴史は、日本の社会保障制度の変遷を映し出す鏡とも言えます。官僚たちの思惑や制度の歪みを理解することは、より良い社会保障制度を構築していく上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。

まとめ

日本の年金制度は、一部のエリートのための特権から始まり、戦時中の必要性から国民皆年金へと発展を遂げました。しかし、その過程で官僚たちの思惑が入り込み、様々な問題も発生しました。これらの歴史を学び、未来の年金制度について考えていくことが大切です。