春闘で大手企業の満額回答が相次ぐ一方で、中小企業では福利厚生を充実させる“第3の賃上げ”の動きが見られる。しかし、医療・介護業界では賃上げゼロ回答の病院・施設が7割以上に上るという厳しい現実がある。なぜこのような賃上げ格差が生じているのか、横浜市の介護施設を例にその実態を探る。
大手企業と中小企業の賃上げ事情
大手企業では、好業績を背景に賃上げの原資が確保され、従業員の生活安定化や優秀な人材確保のために満額回答が続出している。一方、中小企業では、原材料費やエネルギー価格の高騰などにより経営環境が厳しく、賃金の大幅な引き上げが難しい状況だ。しかし、従業員のモチベーション向上や定着率向上のため、福利厚生を充実させることで実質的な賃上げを実現する動きも見られる。例えば、社員食堂の無料化や、育児支援制度の拡充などが挙げられる。
社員食堂の例
医療・介護業界の賃上げの壁
医療・介護業界では、公的医療保険制度による報酬体系がベースアップを阻む大きな要因となっている。診療報酬や介護報酬の改定は国によって決定され、その改定幅は限定的であるため、医療機関や介護施設は賃上げの原資を確保することが困難となっている。また、慢性的な人手不足も深刻な問題であり、賃上げによる人材確保が急務であるにも関わらず、現状では難しい状況が続いている。
介護施設での様子
介護施設職員の声
横浜市の介護施設で働く職員からは、「生活が苦しい中で、賃上げがないのは本当に辛い」「他の業界に転職することも考えている」といった切実な声が聞かれた。介護職は、高齢化社会において必要不可欠な仕事であるにも関わらず、低賃金や重労働といった厳しい労働環境が改善されない現状がある。
今後の課題と展望
賃上げ格差の是正は、日本経済の持続的な成長にとって重要な課題である。中小企業への支援策の拡充や、医療・介護業界の報酬体系の見直しなど、政府による抜本的な対策が求められる。 厚生労働省の担当者(仮名:山田一郎氏)は、「介護職員の処遇改善は喫緊の課題であり、関係省庁と連携して対策を進めていきたい」と述べている。
まとめ
賃上げ格差は、業界や企業規模によって大きく異なり、医療・介護業界では特に厳しい状況が続いている。 今後の日本経済の発展のためには、すべての労働者が適切な賃金を得られるよう、社会全体で取り組む必要がある。