【ロンドン=板東和正】12月12日の英総選挙まで1カ月を切る中、ロンドン西部にあるジョンソン首相の選挙区が注目されている。同選挙区では、欧州連合(EU)の残留を訴える有権者が増加。総選挙で、EUと合意した離脱協定案での離脱を訴えるジョンソン氏の勝利を危ぶむ見方もある。与党・保守党が過半数の議席を獲得しても、ジョンソン氏が落選すれば、首相の退任に追い込まれ、離脱実現への影響は必至だ。
「現職首相を選挙区で負かす歴史的な瞬間を作り上げよう」
16日午後2時過ぎ。ロンドン西部の選挙区「アクスブリッジ・サウスライスリップ」にある駐車場で、最大野党・労働党から出馬するアリ・ミラニ氏(25)が数十人の有権者を前に熱弁をふるっていた。
集まった有権者の大半はEU残留を支持する選挙区の市民で、「ジョンソンを退任に追い込め!」と気勢を上げた。残留派の男性(51)は「ジョンソン氏を落選させれば、離脱の計画を妨害できる」と話した。
元々、EUに懐疑的な有権者が多い同選挙区では、2016年に実施された離脱の是非を問う国民投票で残留の支持は5割未満だった。だが、英メディアによると、経済への影響が必至の「合意なき離脱」が懸念されてきたことから、一部の離脱派が残留派に転向。残留派の割合が5割を超えたという。
労働党は総選挙で、国民投票の再実施を提案することで、残留支持者を引きつけようとしている。同選挙区で、労働党候補は15、17年の総選挙でいずれも2位でジョンソン氏に敗れたが、票差を縮めつつあり、今回は逆転を予想する声もある。
労働党候補、ミラニ氏の健闘の理由は、残留派増加だけではない。その個性と地域に根ざした地道な活動にもある。