日本の自殺対策の重要な柱である「いのちの電話」。しかし、本当に必要な時に繋がらないという声も少なくありません。今回は、実際に利用経験のある方へのインタビューを通して、いのちの電話の現状や課題、そして利用者側の体験を深く掘り下げていきます。繋がりやすさの問題から地域差、さらには相談員の対応まで、様々な角度からその実態に迫ります。
繋がらない現実:電話の先にある希望と絶望
自殺を考えている人が最後にすがる思いでかける「いのちの電話」。しかし、その電話が繋がらないという現実は、どれほどの絶望を与えるでしょうか。20年以上青木ヶ原樹海を取材している筆者は、実際に自殺願望を持つ30代女性Tさんと出会い、彼女の経験を通していのちの電話の現状を目の当たりにしました。
Tさんは20代後半からいのちの電話を利用していましたが、なかなか繋がらないことが多かったといいます。「本当に死にたい時に限って繋がらない。その辛さは計り知れない」と彼女は語ります。
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繋がらない理由:ボランティア不足とシステムの限界
いのちの電話は全国50箇所のセンターで運営され、約5700人のボランティア相談員によって支えられています。1~2年の研修が必要にも関わらず無償であり、費用や交通費も自己負担という厳しい現状から、慢性的な人手不足に陥っているのが現状です。
また、フリーダイヤルと都道府県ごとの固定電話という2つのシステムも、繋がりやすさに影響を与えています。フリーダイヤルは複数回線で比較的繋がりやすい一方、固定電話は1回線のため繋がりにくい傾向があります。
地域差:繋がる県、繋がらない県、そして対応の違い
Tさんは繋がりやすさを上げるため、北海道から沖縄まで順番にかけていたといいます。「東京、神奈川、埼玉、大阪、愛知などの大都市圏は全く繋がらない。逆に東北地方など人口の少ない地域の方が繋がりやすい」と、地域差の存在を指摘しています。繋がりやすさだけでなく、相談内容への対応にも地域差があるようです。例えば、東北地方では震災の話題が多く、Tさんは逆に相談員を励ますことになったという経験もしています。
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関西弁禁止!?:個性豊かな相談員たち
Tさんは、関西の相談員とのやり取りで口論になった経験を語っています。驚くべきことに、関西では関西弁での対応が禁止されているとのこと。また、出身地である岡山の相談員からは「東京が良くない。岡山に帰っておいで」と毎回言われたそうです。地域性が出ることは否めませんが、時にはそれが相談者の負担になる可能性も示唆しています。
今、いのちの電話に必要なものとは?
深刻な人手不足、地域による対応の差、そして繋がらないという根本的な問題。いのちの電話は、多くの課題を抱えています。自殺予防の重要な役割を担うからこそ、これらの問題を解決し、より多くの人々にとって頼りになる存在へと進化していく必要があります。行政の支援、相談員の待遇改善、システムの改良など、多角的なアプローチが求められています。
いのちを守るために:私たちができること
この記事を通して、いのちの電話の現状と課題について理解を深めていただければ幸いです。そして、もし身近に悩んでいる人がいたら、まずは話を聞いて寄り添うことから始めてみましょう。いのちを守るために、私たち一人ひとりができることを考えていくことが大切です。