日本の国民食である米。その米を使った伝統のお菓子、米菓が今、大きな岐路に立たされています。主食用米の価格高騰に端を発した加工用米の不足、そして値上がりが、米菓メーカーを苦境に追い込んでいるのです。今回は、この米菓を取り巻く現状と、メーカー各社の対応について詳しく見ていきましょう。
原材料高騰の深刻な影響
草加煎餅で有名な埼玉県草加市の豊田屋では、看板商品「特選堅焼」が昨年10月の800円から1000円へと値上げされました。国産米にこだわる同社にとって、加工用米の価格は2年前の200円/kgから、今では290円/kgへと約1.4倍に高騰。3代目店主の豊田重治氏(79)は「今後どうなるのか」と不安を隠せない様子です。
草加煎餅を製造する様子
米菓の原料には、加工用米のほか、小粒や割れなどで主食用に適さない「特定米穀」も使用されます。本来価格の安い特定米穀ですが、主食用米の高騰に伴い、こちらも価格が上昇。全国米穀工業協同組合によると、通常200円/kgを超えない価格が、今年4月中旬には約290円/kgに達しました。
主食用米への転換が拍車をかける米不足
農林水産省の調査によると、2025年産の米の作付け意向は、主食用米が増加する一方、加工用米は減少傾向にあります。これは、主食用米の価格高騰を受けて、農家がより収益性の高い主食用米の生産にシフトしていることが要因と考えられます。
この状況は、米菓メーカーにとって大きな痛手となっています。原料の確保が難しくなるだけでなく、価格高騰にも直面しているのです。
各メーカーの対応策:国産米確保か、輸入米活用か
米菓製造が盛んな新潟県でも、各メーカーは対応に追われています。
栗山米菓では、原料に占める外国産米の割合を3年前の1割から現在の6割にまで引き上げています。櫛谷文則生産本部長は「外国産の比率を上げないと価格を抑えられない」と述べています。しかし、それでも昨年夏には主力商品「ばかうけ」を約6%値上げせざるを得ませんでした。
亀田製菓(「亀田の柿の種」「ハッピーターン」など)も同様に、安定供給のため外国産米の比率を高めています。一方、岩塚製菓は地元農家やJAと連携し、国産米の確保に努めています。
日本の伝統を守るために
米菓は、日本の食文化を支える大切な存在です。米菓メーカー各社は、原料高騰という厳しい状況下でも、様々な工夫を凝らしながら、伝統の味を守り続けています。消費者はもちろんのこと、行政や農業関係者も一体となって、この状況を打開していく必要があるのではないでしょうか。 日本の米菓の未来を守るため、私たち一人ひとりができることを考えていきたいですね。