退職代行サービス。一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?近年、若者を中心に利用者が急増しているこのサービス。手軽に退職できるというメリットの一方で、安易な利用を繰り返す人々も少なくありません。今回は、退職代行の利用実態と、その背後にある若者たちの心理に迫ります。
退職代行を2回利用した男性のケース
28歳の井村雅也さん(仮名)は、退職代行サービス「モームリ」を利用して、2社連続で短期間のうちに退職しました。1社目は書籍小売会社で、希望していたデザインとは全く異なる工場部門への配属に納得がいかず、2週間で退職。2社目はエンタメ系の会社で、配属された検品部門が希望と異なり、なんと4日で退職を決意しました。
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井村さんは、「会社も入社してみないとわからない『入社ガチャ』のようなもの。退職代行を使って後悔はなく、むしろすぐに辞められて助かった」と語っています。
なぜ若者は退職代行に頼るのか?
若者の退職代行利用増加の背景には、どのような心理が隠されているのでしょうか?産業カウンセラーの渡部卓氏は、現代の若者に特有の「タイムパフォーマンス(タイパ)重視」の考え方を指摘します。
少しでも違和感を感じたらすぐに転職し、効率よく働きたい。辞めるときもトラブルを避け、時間を無駄にしたくない。このような考え方が、退職代行利用の動機となっているようです。
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さらに、SNSでの情報拡散により退職代行サービスの認知度が向上し、利用への抵抗感が薄れていることも要因の一つと言えるでしょう。
コミュニケーションスタイルの変化も影響か
渡部氏は、若者のコミュニケーションスタイルの変化も退職代行利用を後押ししていると分析します。
日本人はもともと同調圧力が強く、自己主張を苦手とする傾向があります。「アサーション」と呼ばれる、相手を尊重しつつも自分の意見を伝えるスキルが低い若者が多いのです。
また、メールやSNSといったテキストコミュニケーションに慣れたZ世代は、電話での会話に抵抗感を抱く傾向があります。直接的な対話を避け、面倒なやり取りを省略したいという思いが、退職代行利用につながっていると言えるでしょう。
退職代行は本当に解決策となるのか?
手軽で便利な退職代行サービスですが、安易な利用はキャリア形成に悪影響を与える可能性も否定できません。本当に自分にとって最適な選択なのか、慎重に検討することが重要です。