最近、飲食店におけるいわゆる「スマホ注文」が議論を呼んでいる。来店客の間からは「なぜ私物を使わないといけないのか」「モヤモヤする」といった不満が渦巻いているが、外食産業を取り巻く人手不足という深刻な環境変化を前に、経営者からは「値段据え置きのためぜひご協力を」といった切実な声があがっている。
【写真】鮮やかな色合いはイタリアならでは。配膳ロボットは海外でも活躍中
(鄭 孝俊:フリージャーナリスト)
■ 卓上タブレットから、客のスマホから、分かれる注文方法
確かに全国展開している大手ファミリーレストラン各社は、卓上に注文用のタブレットを設置することで人手不足とコスト抑制に努めている。
ただ、外食の中には注文用タブレットを設置せず、来店客に自身のスマホを使って注文するよう促している企業もある。
イタリアンワイン&カフェレストランのサイゼリヤをよく利用する60代の男性自営業者は「大手回転すしチェーン店やすかいらーくグループのガストでは卓上でのタブレット注文が当たり前になっていますが、サイゼリヤは自分のスマホで注文する仕組みです。店内に飛んでいるWi-Fiに繋げば通信費はかかりませんが、バッテリーの充電が減りそうで複雑な気持ちになりますね。なぜタブレットを導入しないのか、不思議でなりません」。
大手外食で対応が分かれるのはなぜなのか。
その答えを探すため、NHK大河ドラマの舞台にもなった地方都市でファミリーレストランを経営している滋野光社長(65、仮名)に直接話を聞いてみた。同氏が経営する会社では外食のほか不動産、食材搬送など手広く事業を手がけており景気の動向に敏感だ。中でも飲食店経営の問題点と展望について次のように指摘した。
「飲食店におけるタブレット注文について、不慣れな高齢者層が戸惑うのではとの懸念がありますが、高齢者は回転すしチェーンによく行くのでタブレットの扱いに意外に慣れています。当店は昨年タブレットを全面的に導入しましたが、高齢者層はサクサクと注文していますよ」
問題はやはり費用だという。