「かわいい!」中国で消滅しかけた象形文字がブーム化…でも復活を喜べない悲しいワケ


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● 日本でも人気のかわいい記号は 中国少数民族の象形文字

 トンパ文字(東巴文字)という不思議な文字をご存じだろうか。これは中国雲南省北西部の麗江市を中心に居住するナシ族(納西族)という少数民族の文字だ。

 トンパ文字は彼らのシャーマンである巫師が用いてきた特殊な象形文字で、次の図からもわかるように、非常にユニークな外見である。なお、書かれているのは「30歳になった驢馬(ろば)はもう一度ラサへ旅に出ようとする」という彼らの俚諺(りげん)である。

 この文字は、実は日本のデザイン業界においては知る人ぞ知る知名度がある。

 かつて民主党(現在の国民民主党と立憲民主党などの前身)のロゴマーク制作を手掛けるなどしたアートディレクターの浅葉克己がトンパ文字に傾倒し、2002年にキリビバレッジから発売された「日本茶玄米」のパッケージデザインにこの文字を用いるなど、作品を多数発表しているからだ。

 日本茶玄米のデザインは、発売当時はかなり話題になり、日本の一般人のあいだでもトンパ文字が知られるきっかけになった。ほかにも彼のトンパ文字デザインは東京アートディレクターズクラブ最高賞やグッドデザイン賞を受賞しているため、この分野に興味がある人なら一度は目にしたことがあるはずだ。

 ネットで調べてみると、プロ野球のロッテの名投手・村田兆治の兄で篆刻(てんこく)家の村田千加良がトンパ文字の作品を作っている、高田馬場にある文房具店でトンパ文字のポストカードや缶バッジが販売された――。といった近年のニュースも見つかる。

 「トンパ文字で年賀状をつくろう」とうたう、児童書の出版社のホームページも存在する。中国雲南省のマイナーな少数民族の文字が、約4000キロ離れた日本でこれだけ受け入れられているのは驚くべき話だろう。実のところ、トンパ文字の知名度は日本のほうが中国国内よりも高いようで、「日本茶玄米」のように商業的な意匠として用いられる事例も、おそらく中国よりも多い。



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