いよいよ大阪・関西万博も始まり、日本に訪れる外国人もますます増えてきそうですが、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授の岡田昭人氏によれば、それぞれの国の人は、話す言語によって思考パターンもそれぞれ異なるのだそうです。
グローバル化が進む現在、外国人とのコミュニケーションを取るうえで、日本人が理解しておきたい「日本語の特殊性」とはどんなものなのでしょうか。岡田氏の著書『教養としての「異文化理解」』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
■「文化圏」ごとに異なる5つの文章構造
アメリカの言語学者であり、異文化間の文章表現や修辞学の研究で知られるロバート・カプランの文章構造の違いに関する理論は、文化ごとに異なる文章の特徴を明らかにし、異文化間のコミュニケーションにおける新たな視点を提供しました。
本稿では、カプランが提唱した5つの主要なパターンを詳しく見ながら、それぞれの文化が文章を通じてどのように自らを表現しているのかを探っていきます。
カプランは、英語のエッセイに見られる直線的な論理構造と、他の文化圏のそれとは異なる論理構造を比較しました。具体的には、異なる文化圏の人々がどのようにして自分の考えを文章で表現するかに注目し、次に挙げる5つの主要な論理構造のパターンに分類しました。
直線的(Linear)
英語圏の文章では、論理が明確で直線的に展開されます。導入、主張、サポート、結論という順序が基本であり、読者が簡単に著者の意図を理解できるように構成されています。
反復的(Circular)
セム語族の言語(アラビア語など)においては、議論はしばしば繰り返しや迂回的な方法で進行し、結論に達するまでに複数の視点が提示されます。
螺旋的(Spiral)
アジアのいくつかの文化(特に日本語、中国語)では、意図が間接的に徐々に明らかになるように進行します。重要なポイントが暗示的に提示されることも多くあります。
逸脱的(Digressive)
ラテン語圏の文化(スペイン語、フランス語など)では、主題からの逸脱が頻繁に見られ、主題と副主題が混在する形で議論が進行します。