現在さまざまな業界で社会問題となっている、カスタマーハラスメント(以下カスハラ)。サービス利用者からの暴言や無理難題への対応といった迷惑行為を指し、東京都が、2025年4月1日に全国初の「カスタマーハラスメント防止条例」を施行するなど、行政の取り組みも本格化しつつある。パーソル総合研究所が2024年6月に発表した調査結果によると、カスハラを受けやすい職種は、福祉、宿泊サービス、受付・秘書業などの“顧客との距離が近い職”。他方、最もカスハラを経験する機会が少ないのは理美容師との結果が出ているが、“無茶ぶり”がないわけではない。迷惑客に遭遇した美容師たちのリアルな嘆きの声を集めた。
「シャンプーは持参だから安くなりますよね」
神奈川県にある店舗に勤める美容師・Aさん(30代女性)は、「気持ちよく帰って欲しいので、リクエストには基本的に対応する」というが、それでも「勘弁してほしい」という利用客のエピソードを明かす。
「ある女性のお客さんで、シャンプーの際、こちらが髪を濡らした後で『自分が普段使っているシャンプーを持ってきているので、それを使ってほしい』と言い出した人がいたんです。『アレルギーがあるので、これじゃないと肌を傷める』ということでした。もちろん、持ち込みをOKにしている美容室もあると思うのですが、うちではそのようなサービスはしていない。もう髪を濡らしてしまっていたこともあって特別に対応しましたが、事前に確認してほしかった……」(Aさん)
持ち込みシャンプーによる洗髪について、“今回だけ”だと念押しをしたが、厄介事はその後にも待ち受けていた。
「会計の時、その女性が『シャンプーは持参だからお会計は安くなりますよね?』と言うんです。そういう話ではないですし、仮に安くしてもシャンプーは液体にかかるお金ではなくて、メインは髪を洗うというサービスに対するお金。店長に、料金は本来価格で対処してもらいつつ、やんわりと“シャンプーの持ち込みがOKかどうか”は事前に確認したほうがよいことをお伝えしました」(前同)