子どもの発達に不安を持つ親が保育所探し以上に苦労するのが「療育探し」だ。「療育」はもともと体に不自由がある子への支援のなかで生まれた言葉だが、次第に範囲が広がり、今は「発達支援」を含む。児童発達支援を行う事業所や施設は、障害があると診断されている子だけでなく、子に困りごとがあれば誰でも行く可能性がある場所だが、当事者以外にはあまり知られていないため、療育をすすめられた親は驚き、迷う。そんな療育の現場を漫画で伝えるのが、クリエーターのゆり子さんだ。漫画はどのようにして生まれたのか。(取材・文:川口有紀/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
保護者や現場の支援員らの共感呼び 漫画は134万ダウンロード
「アンジェルマン症候群の小夏ちゃんの話で、親の描写を入れたら一気に反応が届き始め、そうか、読者は共感したいのか、と思って。次のADHD(注意欠如多動症)のわたるくんの話で、さらに反響が大きくなりました。先生の指示を守れず、暴言や他害が自分でも止められないわたるくんタイプにどう接するか、みんな悩んでいたんだと思うんですよね」
未就学児が対象の児童発達支援事業所を舞台とした漫画の作者・ゆり子さんは、療育に対する世の中の関心の高さをそう語る。
電子書籍で漫画を発表している。「小夏ちゃん」と「わたるくん」はその登場人物。保育所や幼稚園のほかに週に何度か、児童発達支援事業所「ももの木スクール」に通う。二人ともいわゆる「育てにくい子ども」だ。小夏ちゃんの母親は疲弊し切って、わたるくんの母親は保育所を追われるようにして、ももの木スクールにたどり着いた。
レビューには、「悩みや接し方や迷い方がリアルすぎて何度も頷きました」「この漫画…正直もっと前に出会いたかった!」といった保護者の感想が並ぶ。2023年の連載開始から累計134万以上ダウンロードされた。
「なんにも知らない状態で、幼稚園や保育所の先生から『ほかの子よりも発達がゆっくりかもしれない』とか、『ちょっと療育に行ってみたら』と言われると、びっくりするじゃないですか。重い知的障害のある子が行くところと思っている人も多いかもしれない。でも漫画である程度知っていれば、いろいろな子がいる場所だと知ることができる。一見そうは見えない子も困りごとがあれば行くんですよという意味で、軽度の子も重度の子もたくさん登場させるぞ、と思って描いています」
シリアスなテーマだが、子ども同士のほっこりするやりとりや、思わず笑ってしまう大人びた言動など、子どもたちの愛らしさが随所に織り込まれている。支援する側の葛藤も描かれており、保育士や支援員からも反響が届くという。
「反省の感想が多いかもしれません。(発達や障害のことを)よく理解せずにやってましたとか、保護者になんてことを言ってしまったんだろうとか。あとは、うち(の事業所)もこうです、みたいな共感だったり」
保護者からも支援者からも共感される「療育漫画」はどのように生まれたのか。