近年、肝臓の健康に注目が集まっています。医学が進歩して、肝臓こそ健康長寿を実現するカギになる臓器だということがわかってきたのです。
たとえば、「脂肪肝」は、これまで「誰でもかかるたいしたことない病気」のように扱われてきましたが、じつは「動脈硬化や糖尿病などを招く重大な病気」であることが判明しています。脂肪肝を甘く見て放っていたら、老化や病気が加速して、先々の人生を大きく狂わせることにもなりかねません。
ただ、肝臓は、ポイントを押さえたケアを行えば復活する臓器です。肥満やアルコールなどの問題で長年健診の肝機能の数値が悪かった人も、やるべきことをやりさえすれば短期間で回復させることができます。
では、どんなケアを行えばいいのか。肝臓専門医として46年間、患者を診続けてきた栗原毅医師は、新著『肝臓大復活』の中で、すぐに役立つ肝臓ケアのノウハウを惜しみなく紹介しています。
以下では、その栗原医師が「『やせた人』や『アルコールを飲まない人』がなぜ脂肪肝になるのか」について解説します。
■「こんなにやせてるのに、なぜ脂肪肝?」
脂肪肝というと「太った人がなる病気」というイメージを持っている方も多いでしょう。また、「お酒をたくさん飲む人がなる病気」というイメージを持っている方も多いと思います。
しかし、こうしたイメージが当てはまらない場合も数多くあります。
それというのも、「やせた体型の人」や「アルコールを飲まない人」が脂肪肝になるケースも少なくないのです。
「かなりやせているほうだし、お酒なんてまったく飲まないのに、健康診断の肝機能の数値がめちゃくちゃ悪くて、再検査時にお医者さんに聞いたら意外にも脂肪肝だと言われた……いったいどうして?」――そういうケースがけっこう増えてきているんですね。
なぜ、やせているのに肝臓に脂肪がたまってしまうのか。その主たる原因は「筋肉量が少ないせい」と考えられています。
どうして脂肪肝に筋肉量が関係するのか、から説明しましょう。
そもそもわたしたちの筋肉は、体内の余った糖質を「いざというときのためのエネルギー」としてストックする役割を果たしています。
ブドウ糖をグリコーゲンに変えて筋肉内に貯蔵しているわけで、言わば糖質エネルギーを預かる倉庫のようなもの。そのため、やせ型で筋肉量が少ないということは、糖質をストックできる倉庫の量も少ないということになります。