資源エネルギー庁が14日発表した九州・沖縄のレギュラーガソリン1リットルあたりの平均価格は186・7円だった。昨年末から過去最高水準の180円台が続く。価格高騰のきっかけは産油国のロシアがウクライナ侵略を始めたことだったが、最近は原油価格が下落傾向にもかかわらず高止まりしている。全国平均(183・0円)を上回り、地域別で最も平均価格が高い九州・沖縄の事情に迫った。(橋谷信吾)
最安値のGSに長蛇の車列…安さの秘密は「業転玉」
都道府県別のレギュラーガソリンの平均価格で全国最高になることが多い鹿児島県。今月2日、鹿児島市のガソリンスタンド(GS)「エコスタンド工学部前店」には、一帯で最も安い価格を目当てに長蛇の車列ができていた。
この日はレギュラー1リットル171円で、前日にエネ庁が発表した県内の平均価格193・7円(4月28日時点)を1割以上、下回っていた。訪れた男性(62)は「ほかの店よりも10~20円安いこともあり、助かっている」と話した。
安値の理由について運営会社「はーもにーりんぐ社」の中村哲人・統括マネージャーは、割安な「業転玉」だけを仕入れていることを明かす。ガソリンの原料となる原油を精製する過程では、プラスチック原料や航空燃料なども一体的に生産される。特定の製品だけを集中的に精製できないため、ガソリンが余る場合がある。元売り大手が余剰分を商社などに安値で売却したものが業転玉だ。
調達量が安定しないリスクもあるが、平均価格が高い鹿児島では集客効果が大きい。それでも中村さんは「物価高で給油量は落ちており、利益は目減りしている。生活防衛意識の高まりを感じる」と話した。
九州には製油所が1か所のみ…輸送コストなど上乗せ
ただ、業転玉に頼るGSは一部で、多くの仕入れ先は出光興産やENEOS、コスモ石油といった元売り大手の系列だ。こうした中、九州・沖縄の平均価格は全国の中で最高水準が続く。安値競争はあるものの、最近は変化も生じている。
まず高値には特有の事情がある。九州には製油所が大分市のENEOS系列の1か所しかなく、輸送コストがかさむ地域が多い。長崎、鹿児島、沖縄県には離島が多く、さらに輸送費がかかるため平均が押し上げられる。製油所から運ばれたガソリンを一時、ためておく「油槽所」は各県にあり、その維持管理費も上乗せされる。