日本の物価事情、最新データで判明した「最も物価が高い都市」の意外な顔ぶれ

物価高騰が日本経済を揺るがし、今夏の参院選における主要な争点の一つとなっています。米や食品をはじめ、様々な品目の価格上昇に関する情報は日々報じられていますが、一方で、消費者物価の地域差に関する詳細な統計データは、一般にあまり知られていません。最近公表された興味深い調査結果は、多くの人が抱くイメージとは異なる日本の物価事情を明らかにしています。

最新データが示す意外な事実:物価高1位は横浜

「全国で最も物価が高いのは東京」というイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、総務省統計局が公表している「消費者物価地域差指数」の最新データによると、そのイメージはもはや現実と異なっています。驚くべきことに、現在、日本で最も物価が高い都市は東京都区部ではなく、横浜市です。

過去10年間の推移と東京の物価水準の変化

この消費者物価地域差指数(全国平均を100とする)の推移を、家賃を含む「総合」と、家賃を除いた「総合(一般物価)」の二つの指標で見てみましょう。バブル経済の影響が残っていた2010年代以前、東京都区部は「総合」で全国水準より約12%、「一般物価」で約8%高く、全国で最も物価の高い地域でした。

しかし、2010年代以降、東京都区部の物価水準は低下傾向を示し、「総合」で5〜6%高、「一般物価」で3〜4%高と、かつての半分の水準にまで落ち着きました。

一方、横浜市は東京ほど物価の低下幅が大きくなかったため、2010年代半ばからは「一般物価」において東京都区部を上回ることが多くなりました。

図表1:消費者物価地域差指数(東京都区部・横浜市)の推移グラフ図表1:消費者物価地域差指数(東京都区部・横浜市)の推移グラフ

2024年の最新の「一般物価」の数値では、コロナ禍で一時的に高騰した東京都区部の保健医療品などの価格が落ち着いたこともあり、5年ぶりに横浜市が東京都区部を上回りました。さらに、この最新データでは、東京都区部は横浜市に次ぐ2位ではなく、札幌市をも下回る全国3位となっています。

トータルで見ると、家賃を除く一般物価において、東京都区部はもはや「日本一物価が高い地域」ではなくなり、その地位を横浜市に譲ったと言えます。

国際比較で際立つ東京の相対的な安さ

日本の物価上昇率は、海外の主要国に比べると緩やかです。この国内での物価水準の変化に加え、海外との比較では東京都の物価の相対的な安さがさらに際立ちます。

マーケティングアナリストの原田曜平氏は、海外主要都市と比較した場合、東京都の物価は安く、特に若者にとって「過ごしやすい都市」になっていると指摘しています。流行の最先端という意味では、アジアの上海やソウルが注目される中でも、「世界の先進国の大都市部で最も楽(ラク)に暮らせる街」は東京であると述べています。

例えば、約20年間日本に来ていなかったというニューヨーク在住の友人が、東京でのラーメン価格(800円〜1000円)を聞いて驚いたというエピソードは、この状況を象徴しています。彼がその後に東京旅行を敢行し、「安くて本当に快適だった」と大変満足していたことからも、この約20年間で、東京を含む日本の物価は、欧米先進国の大都市部に比べて非常に安価なエリアになったことがわかります。

結論として、国内の地域差を見ると家賃を除く一般物価で横浜市が東京都区部を上回り全国トップとなりましたが、国際的な視点で見ると、東京都は主要な大都市の中では相対的に物価が安い、暮らしやすい都市へと変化していると言えるでしょう。