春はあっという間に過ぎ去り、すっかり初夏の陽気となった。この時期になると、入浴はシャワーだけで済ませる人が増えてくる。一方で、暑くても湯船には浸かるという人も多い。シャワー派と湯船派……果てしてどちらがより健康的なのか。エビデンスに基づく解説で、決着をつけようではないか。(構成/ココロミル、監修/東京科学大学 教育研究組織 病院 医系診療部門・内科系診療領域 循環器内科 助教 磯谷善隆氏)
● 毎日湯を張るとお金が… タイパもコスパも悪い湯船
春から夏にかけて気温が上昇すると、「湯船に浸かるのは暑くて面倒」と感じ、シャワーだけで済ませる方が多いのではないでしょうか。特に都市部では、浴槽を使用せずシャワーのみで済ませる家庭も少なくありません。
また、経済的な理由から光熱費を節約するために浴槽にお湯を張ることを控える方も少なくないでしょう。近年では「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する傾向もあり、シャワーだけで手早く済ませたいというニーズも高まっています。
しかし、入浴方法によって健康への影響が異なる可能性があることをご存じでしょうか。特に心疾患のリスクに関して、湯船に浸かる習慣とシャワーだけの習慣で差があるという研究結果が報告されています¹。
では、実際にどちらの入浴方法が心疾患のリスクを高めるのでしょうか。
結論から申し上げますと、湯船に浸かる習慣がある人のほうが、心疾患のリスクが低いとする研究結果があります(※1)。定期的に湯船に浸かる人々は、シャワーのみの人々と比較して心疾患の発症率が低いことが示されています。
なぜそういう結果が出たのでしょうか。
湯船に浸かることで、血行が促進され、血圧の安定やストレスの軽減など、心臓に良い影響を与えると考えられています(※2)。また、温熱効果により血管が拡張し、心臓への負担が軽減されることも要因の一つです。
湯船には毎日浸からないといけないのでしょうか。
毎日でなくても、週に数回湯船に浸かることで、心疾患のリスク低減に効果があるとされています(※3)。自分の生活リズムに合わせて、無理のない範囲で湯船に浸かる習慣を取り入れるといいでしょう。
湯船に浸かる際の注意点として、以下の点が挙げられます。
1. お湯の温度は40℃以下に設定する(※4)。
2. 入浴時間は10分程度を目安にする。
3. 食後すぐや飲酒後の入浴は避ける。
4. 脱水症状を防ぐため、入浴前後に水分を補給する。
暑さが増すこれからの季節、「湯船に浸かるのは避けたい」と思う方もいるでしょう。そんなときは、以下の方法をお試しください。
1. 37℃〜39℃ぐらいのぬるめのお湯で半身浴をする(お湯の量はみぞおちぐらいまで)
2. ミント系のボディソープやクールタイプの入浴剤を使う。
3. なるべく涼しい時間帯に湯船に浸かる。
4. お風呂上がりに保冷剤を包んだタオルなどを首元にあてる。
5. 入浴前後は冷たい麦茶や水などで水分を補給する。
他にも心疾患のリスクを上げる習慣、下げる習慣はあるのでしょうか。
心疾患のリスクを上げる習慣には、喫煙、過度な飲酒、運動不足、ストレスの蓄積などがあります。一方、リスクを下げる習慣としては、バランスの取れた食事、定期的な運動、十分な睡眠、そして今回取り上げた湯船に浸かる習慣などが挙げられます。