ぼだっこの弁当がネットで騒動に
X上で紹介された、ある弁当の写真が炎上した。写っていたのは、びっしり敷き詰められたご飯の上に、鮭の切れ端が乗っただけの弁当。価格は150円である。これを見たあるX民が、「これが150円のシャケ弁か」とポストしたところ、「えwwwこれ、冗談じゃなくて本当にですか」「寂しい弁当」「150円ならこんなものか」「貧乏飯商品、増えてますね」などのコメントが寄せられていた。
また、ある政党の支持者を名乗るX民もこの写真を使い、「150円のお弁当。これが売り場にある時点でおかしな国、日本」「30年前は1億総中流だったはず。どうしてこうなった」と投稿していた。コメントから推察するに、この弁当が貧困の象徴もしくは貧乏飯のように見えた人は多かったようである。
確かに、弁当のビジュアルを見ただけだと、貧乏くさく感じる人がいても当然だろう。格安弁当のように思えるのも仕方ないのかもしれない。ところが、それは大きな見当違いと断言せざるを得ない。なぜなら、この弁当は秋田県の郷土料理、“ぼだっこ”を乗せた弁当だからである。
ぼだっこの不思議な呼び名の由来は諸説あり、鮭の切り身の鮮やかな色がボタンの花に似ているためだとか、その見た目がいろりに入れるほだ木に似ているから、とも言われる。
普通の鮭の切り身とは別物
さて、ぼだっこは通常の甘鮭とはまったく別物だ。秋田県出身の筆者に言わせれば、この量が“適量”なのである。というのも、この弁当が“げきから”を謳っているように、ぼだっこはとんでもなく塩辛くした紅鮭なのである。少量の切れ端だけで、コメを無限に食べることができてしまうのである。
秋田県で開発されたあきたこまちは甘みと旨みの強い品種であり、ぼだっことの相性もいい。したがって、150円の弁当は貧乏飯ではないのだ。むしろ、少しの切り身でコメの旨みを存分に堪能できるのだから、贅沢なことこの上ない。ぼだっことコメがもつポテンシャルを最大限に引き出した弁当ということができる。
この弁当が販売されているのは、秋田県大仙市にある「しゅしゅえっとまるしぇ」という地元産食材などを販売する店である。Xで検索すると、写真がバズった影響で多くの人が現地に足を運び、実食しているようだ。その影響か、秋田県湯沢市在住のイラストレーター・菅貴彦氏が現地に行ってみたところ、なんと昼過ぎには“完売”していたそうである。