『うる星やつら』のラム役や『キン肉マン 完璧超人始祖編』のミートくん役を務め、声優デビュー15年目の今も注目を集め続ける、上坂すみれ。
現在公開中の劇場版『僕とロボコ』では、原作漫画、TVアニメでおなじみの『僕とロボコ』の世界にマルチバースから4体のロボコが迷い込む映画独自のストーリーの中でロボコ(ラブコメの世界線)を好演している。
実はTVシリーズのオーディションには落ちていた
「実は私、TVシリーズのロボコ役のオーディションに落ちていて……。今回ラブコメの世界線のロボコ役にオファーされたうえに、キャスト表には別の世界線のロボコ役に田中真弓さん、千葉繁さん、野沢雅子さんのお名前があったので、最初は『ホントかな?』と思ってました。作品自体は“いい意味でズルい”というか、『怒られるからやめようよ』ってくらい往年の名作の数々をパロディしているものの(笑)、どの引用元にも丁寧なリスペクトを捧げつつ新しいギャグを生み出していて、とても好きですね。私自身、これまでに出演してきたラブコメ作品で吸収してきたエッセンスを抽出しながら楽しくお芝居させていただきました」
劇場版『僕とロボコ』で大御所声優とともに配役されたことしかり、冒頭に並べたアニメ作品に出演したことしかり。’11年の声優デビュー以来、常に注目を集め続けてきた彼女だが、近年は特に大作・大役にキャスティングされることが増えている。
「コロナの影響でお仕事が何か月も止まった時期に逆に体調がよくなったんです。それ以前は毎日キャパオーバー気味。お仕事に対して『もっとできたのに』という思考すらできない日もありましたが、たくさん休んで創意工夫の余地ができたというか。この役を通じて自分は何を表現できるのか? とゆっくり考えることができるようになり、仕事が何倍も楽しくなって。それがいい方向に作用しているのかもしれないですね」
コロナ禍を挟んだからこそ気付いた現場の貴重さ
さらにここ数年、対人関係にも変化があったのだとか。
「コロナを挟んだからこそ、アフレコ現場ってすごく貴重なんだってあらためて気付けたんです。だからこそ共演者さんとのお芝居や会話をより大事にしたいし、最近は『初アフレコです』という新人さんと一緒になる機会も増えていて。例えば去年、『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』という映画の舞台挨拶で福嶋晴菜さんとご一緒したんですけど、福嶋さんは舞台挨拶が初めてだったとのことで。そういうときに『こういう時はこうすれば上手くいきますよ』と声をかけられるようになったことには、我がことながら変化を感じています。以前は話しかけられては『へっ!?』ってなってたのに」
なお、上坂は声優活動と並行して’13年から音楽活動も展開しており、これまで15枚のシングルと5枚のオリジナルアルバム、さらにベスト盤を1枚リリースしているが、彼女は自身の活動を「いい意味で趣味かもしれない」と笑う。
「個人的には声優になりたくてこの世界に入ったら、いろいろなご縁があってアーティスト活動もさせていただけるようになったという感覚なんです。だからタイミングが合ったら曲を作るし、ライブもできたらいいな、というノリというか。(声優アイドルグループ・i☆Risが「今週の顔」に登場している『週刊SPA!』をめくりながら)この3月まで『声優と夜あそび』というネット番組で共演していて、プライベートでもよくごはんに行っているセリコ(i☆Risの芹澤優)は本当に根がアイドルというタイプ。
声優としてお芝居にもしっかり取り組みつつ、さらにすごくまっすぐ音楽にエナジーを傾けているから『本当にすごいよ、君』という話をよくしていますが、私はまた別のタイプというか。『楽しく音楽活動をするのも、別に悪いことじゃないのかな』という開き直りのもと活動させてもらっています(笑)」
自身はそう謙遜するが、多彩な作家陣による“上坂すみれの音楽”は、アニソンシーン内外から熱視線を注がれるワンアンドオンリーなものばかり。そしてそんな彼女は来たる6月、その音楽的キャリアと声優としてのキャリアのハブともいうべき「キャラソンライブvol.1『FLASHBACK HEROINES』」を開催する。