あえて火中の栗を拾ったのかもしれないが、前途は極めて多難だ。江藤拓・農林水産大臣が事実上の更迭となり、小泉進次郎・自民党前選対委員長が新しい農水相に就任することが決まった。現在が“平時”なら小泉氏は安全運転に努め、農水相の職責を大過なく果たすという戦略も有効だろう。だが現在の農政は有事中の“有事”であり、国民は小泉氏に明確な成果を求めている。一歩間違えば小泉氏に非難の集中砲火が浴びせられ、「将来の総理候補」の座が揺らぐ危険性すらあるのだ。
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新しい農水相が国民から失望される原因として筆頭に挙げられるのは、逆説的だが政治家としての知名度が非常に高い点だろう。担当記者が言う。
「コメの異常な高騰が続き、これまでとは比較にならないほど農水相の一挙一動には注目が集まっています。率直に言って前農水相の江藤拓さんは知名度の高い政治家ではありませんでした。ところが江藤さんが農水相になると国会や大臣会見の発言はメディアに詳報され、国民の反発を招いたものも目立ちました。小泉さんが新大臣に就任すると、基本的には火曜と金曜の週2回、大臣会見で記者と質疑応答を行う必要があります。江藤さんが大臣だった時より関心が高まるのは間違いないでしょう。失言や暴言は当然として、いわゆる珍回答や迷言が飛び出しても江藤さんの時より多くのメディアが詳報し、SNSで急速に拡散して物議を醸すと考えられます」
ご存知の通り、小泉氏には“前科”がある。彼は2019年から21年まで環境大臣を務めたが、19年9月に国連気候行動サミットに出席するために訪米すると、「気候変動のような大きな問題は楽しく格好良くセクシーであるべきだ」と発言して強く批判された。
すでに“プチ炎上”した発言
「この訪米では『今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思っています』とのコメントも飛び出し、極端な同語反復は『進次郎構文』と命名されました。ご存知の方も多いと思いますが、今でもネット上には様々なパロディが投稿されています。そして今の農水相会見は、他の大臣会見よりも厳しい姿勢で国民は注視しています。何より国民はコメの高騰に怒っていますから、普通の大臣なら失笑で終わる珍発言や迷言でも、農水相だと批判が殺到する可能性があります。記者は必ずコメの価格について質問するでしょうし、これに小泉さんは釈明に追われることが多いと考えられます」(同・記者)
まず珍発言や迷言のほうだが、すでに就任前の発言が“プチ炎上”している。小泉氏は5月20日、江藤前農水相の「コメ買ったことない」の発言に関連して記者から購入の有無を質問されると、笑顔で「もちろん買ったことがあります」と回答したのだ。
ところがネット上では「買ったことがあります」が「普段は買っていない」と解釈された。そして小泉氏が江藤氏と同じ世襲議員であることも“プチ炎上”に影響を与えている。