母親が倒れたらどうしよう――。
東日本に住む女性(40代)は、そんな不安を抱えながら日々を送っている。
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女性には50代の兄がいる。兄は高校時代、同級生からのいじめが原因で学校を辞めひきこもるようになった。その後、家族との関係も悪化し実家近くで一人暮らしを始めた。
以来、兄の生活は両親に依存してきた。父親は昔から兄に無関心だったので、生活費は全て母親が工面した。しかも母親は、毎月かなりの額を兄に渡し続け、兄はそれで不自由のない暮らしを続けてきたという。だがその母親もすでに80代前半。今は健康だが、いつまで働けるかはわからない。
女性はすでに実家を出て家庭を持っている。兄は、母親からの金銭的援助を得られなくなったら、次は自分にお金を要求してくるようになるかもしれないと思うと、女性は気が気ではない。
女性は言う。
「母親の役割を私に求められるのは嫌です」
女性は兄との連絡は一切絶っているが、夫と相談し、兄の知らない場所への引っ越しを考えたこともあった。だが、住所を突き止められる心配があるので諦めた。
■「相談は受け付けていない」
ひきこもっている本人を部屋から暴力的に連れ出し施設に入れる、いわゆる「引き出し屋」と呼ばれる民間業者のことを調べたこともある。だが、料金が高額なうえに、本人の心身が病んだりするなどのトラブルが絶えないことを知りやめた。
一度、自治体の相談窓口に行ったこともあった。しかし、窓口で「妹からの相談は受け付けていない」と一蹴された。両親に動いてもらおうとしたが、両親は行政に相談しても無駄だと考えていて動いてくれなかったという。
いま女性は母親から、「あなたは関係ないから気にしないように」と言われている。しかし、不安を拭えない。
「関係ないで済まされる話じゃないような気がしています。ただ、できる範囲での協力はしたい、でも関わると自分の生活が壊れてしまう気がして、割り切りたいけど割り切れないという気持ちをずっと抱えています」(前出の40代女性)