(ブルームバーグ): 石破茂政権は「コメを買ったことがない」発言で批判を受けた江藤拓農相を続投させる方針だ。発言を撤回したものの、夏の参院選を控えた与党にとって痛手となる。
石破首相は20日午後の衆院本会議で、江藤氏の発言について極めて不適切だったとし、「心よりおわびする」と陳謝した。今後についてはコメの価格の高止まりなど山積する農政の課題解決に向け、「職務にまい進し、全力を尽くさせたい」と続投させる考えを強調した。
コメの価格は過去一年で倍増し、備蓄米の放出後も上昇が続いている。人気飲食店チェーンもコメの価格高騰を理由に相次いで値上げを表明。共同通信の週末の世論調査でも、87%が政権のコメ価格対策に不満を示していた。7月に想定される参院選を控え、担当閣僚による江藤氏の発言はさらなる政権不信につながりかねない。
国民民主党の玉木雄一郎代表は午前の記者会見で、今回の発言で江藤氏に辞任は求めない考えを示した。ただ、コメの価格対策で「結果を出してほしい」とし、「結果が出ないのだったら進退が問われ、政権の是非が問われる問題に発展する」と述べた。参院選で最大の争点の一つになるとの認識も強調した。
江藤氏は18日、佐賀市内で行った講演で、「支援者の方々がたくさんコメをくださる。まさに売るほどある。家の食品庫には」などと発言していた。これを受け、X(旧ツイッター)では江藤氏の名前がトレンド入りし、一部から辞任を求める声が上がった。
林芳正官房長官によると、石破首相は19日、江藤氏を官邸に呼び、叱責(しっせき)したという。江藤氏は発言を撤回した。20日午前の記者会見で明らかにした。
–取材協力:照喜納明美、下土井京子.
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Mari Kiyohara, Takashi Hirokawa