福岡県筑紫野市針摺西1の県道交差点で19日午後、下校中の小学生の集団に軽乗用車が突っ込み、男児ら5人が負傷した事故で、現場で男児らの応急処置に当たった近くのクリニックの男性院長が20日、読売新聞の取材に応じた。院長は「最悪の事態も想定したが、命に別条がなかったのは不幸中の幸いだ」と振り返った。(井芹大貴、相良悠奨)
「倒れている人がいる。すぐに来てほしい」。19日午後3時過ぎ、現場の交差点から約100メートル離れた「たかやま肛門・胃腸・外科クリニック」の受付に、事故の目撃者が駆け込んできた。院長の高山和之さん(65)は、すぐに女性看護師と2人でガーゼを持って現場へ。軽乗用車が横転し、近くの市立二日市東小4年の男児4人(いずれも9歳)が倒れるなどしていた。
周囲には血だまりができ、車の部品のような物が散乱。「これはただ事じゃない」。専門は消化器外科で、小児科は専門外だが覚悟を決め、処置を始めた。男児4人のうち1人の負傷は特にひどく、顔から激しく出血。看護師と交代でガーゼを顔に押し当て、吹き出し続ける血の止血を続けた。
別の男児は、顔の半分が普段の倍ほどに腫れているように見えた。ただ、4人とも意識はある様子で、「次第に命に関わるような状況ではないと分かり、安心した」。10分ほど男児1人の止血に当たった後、駆けつけた救急隊員に引き継いだ。軽乗用車を運転していた市内の自営業女性(74)を含めて5人が搬送されたが、全員命に別条はなかった。
現場交差点は車や人通りが多く、「通学路としては危険な場所だと思っていた」という高山さん。「命が助かって良かったが、事故を目の当たりにした子どもも多い。精神的なケアも行ってほしい」と関係機関に求めていた。
DJポリス「安全運転を」呼びかけ
事故を受け、県警筑紫野署員らは20日朝、現場周辺で登校する児童らの見守り活動を行い、マイクを手にした「DJポリス」も運転手らに「安全運転を」と呼びかけた。同署の山村祐也・交通課長は「ドライバーには安全な速度、距離を保って運転してほしい」と話していた。