六代目山口組の一方的な宣言により10年に及んだ山口組分裂抗争が終結。あれから1ヶ月が経過した。六代目山口組は高山清司相談役から「若頭」を継いだ竹内照明若頭のもと、組織改編に精を出している。「まるでこの失われた10年を取り戻そうと言わんばかりの勢いだ」と実話誌記者は指摘する。
「竹内若頭は組織の若返りに注力しているように見られる。竹内若頭就任と同時に若頭補佐に昇格した加藤徹次・豪友会会長は50代と若く、他の2つの直参組織からも先代を総裁にし、若手を直参組長に昇格させている。
さらに、5月に入っても落合金町連合の佐藤光男会長が若頭補佐に就任し、“幹部”職にも若手直参組長3人が昇格したと見られている。わずか1ヶ月ほどの間にこれだけ人事を行なうのは珍しく、六代目組長でもある司忍組長の意向も大きいだろう。
今年創設110周年を迎えた山口組だが、150年、200年続く組織にという声が内部から上がっている」
しかし、警察当局の視線は依然、厳しい。六代目山口組、抗争相手の神戸山口組、池田組、絆會らへの特定抗争指定は解除されておらず、見通しも厳しいようだ。
「指定は3ヶ月ごとに更新で、次回6月のタイミングではまず延長されるでしょう。焦点はその次の9月ですが、過去の例を見ると抗争終結から1年近く解除措置がなくてもおかしくはない。
六代目側は傘下組織に“手を出すな”と厳命していますが、神戸山口組ら抗争相手も健在。双方に恨みを募らせている組員も少なくないでしょうし、突発的な事件が起きる可能性も否定できない」(全国紙社会部記者)
予断を許さない状況が続くなか、大局に影響を及ぼしかねない事態が生じていることがわかった。前出・実話誌記者が語る。
「反六代目」組長の自宅が差し押さえに
「神戸山口組の井上邦雄組長の神戸市内にある自宅と、宅見組の入江禎組長の大阪・豊中市にある自宅に対し、それぞれの地裁が強制競売手続きを開始し、土地と建物を差し押さえたことがわかったのです」
宅見組はもともと山口組の名門組織として知られていましたが、その後、神戸山口組の中核組織の一つに。入江組長も神戸山口組の副組長を務めていたが、2022年夏に脱退。その後は“反六代目連合”として神戸山口組や池田組らと連携していたと見られている。
井上組長の神戸市の自宅、入江組長の豊中市の自宅の登記簿を確認すると、いずれも都内にある不動産管理会社が債権者となり、井上組長宅は今年1月30日付、入江組長宅は2月5日付で「強制競売開始決定」という理由で差し押さえが登記されている。入江組長宅は夫人と見られる女性と持分2分の1ずつの共有名義になっているが、入江組長持分のみ差し押さえになっている。
「2020年に経営コンサルティング会社が、神戸山口組系幹部(当時)に融資の名目で金を騙し取られたという理由で、井上組長ならびに当時は神戸山口組の副組長だった入江組長は、使用者責任を問われる損害賠償請求を起こされています。
地裁、高裁で約2億7000万円の賠償を命じられ、両組長は高裁判決を不服として上告受理を申し立てていますが、判決が確定した後に賠償金の支払いがなければ強制退去になると見られている。
現状、堅牢なセキュリティが担保された転居先を見つけるのは難しいため、両組長は賠償金を支払うしかない。しかし、シノギ(暴力団の経済活動)も厳しく、組員数が減少するなか、組織のお金を使って巨額の賠償金を払うのが彼らにとって正しいのか。
この賠償金をどうするかによって井上組長らの今後の意向も汲み取れるため、まるで“踏み絵”だと関係者の間でもっぱらです」(同前)
表向きは終結した分裂抗争だが、その余波はさまざまな形で広がっているようだ。