実は今、世界の映画市場でハリウッドが陰りを見せる一方、日本映画は興行収入で過去最高を記録し、国内外で存在感を増しています。
なぜ今、日本映画はこれほどまでに好調なのか? その背景には、国際情勢や業界構造、そして日本独自のヒットの仕組みが複雑に絡んでいます。
本稿では和田隆著『映画ビジネス』より、映画において「邦高洋低」の時代が続く理由を、業界紙の記者として映画業界の表と裏を取材をしてきた著者が読み解きます。
■「洋画離れ」は世界共通か?
一般社団法人日本映画製作者連盟(映連)は、毎年1月末に新年記者発表会を開催し、前年の映画概況(成績)を報告、各社の新しいラインナップについても説明しています。2025年は1月29日に行われました。
2024年の国内の年間興収は2069億8300万円で、2023年比144億円減(93.5%)。内訳は、邦画が1558億円で前年比76億円増(105.1%)、洋画が511億8300万円で前年比221億円減(69.8%)。
邦画は、2016年の1486億円を大きく上回り、新記録で歴代1位となりました。
興収10億円以上の邦画は『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』ほか31作品。引き続きアニメが好調で、2作品が興収100億円を突破。邦画上位10本のうち、アニメが6本を占めています。
50億円超えは、2023年より2本増えて7本でした。
その一方で、洋画は2023年のアメリカ脚本家組合と俳優組合によるストライキの影響により、公開本数の減少が2024年に表面化しました。公開本数は邦画が685本で前年より9本増、洋画が505本で51本減。邦画と洋画合計で1190本、2000年以降では4番目の本数です。
日本国内において興収10億円以上の洋画は、『インサイド・ヘッド2』ほか10作品。
2023年は15作品だったので大きくダウンし、50億円以上は1本のみ。2000年代に入り、2006年に邦画の興収が洋画を上回り、翌年に洋画が巻き返しましたが、2008年から邦高洋低の状態が続いています。
■低迷するハリウッド映画
洋画の不調は日本国内に留まりません。
エンタテインメントの情報メディア「GEMStandard」のレポート「世界・アジア太平洋映画興行概況」(国・地域別推移)によると、世界の映画興行収入はコロナ禍を経て、2023年は340億ドルに達しましたが、2024年は310億ドル(予想)に減少(出典:アメリカ・Comscore社)。北米の興行成績も2023年の91億ドルから2024年は86億ドルと、5.5%減となっています。