「オーバードーズをするくらいなら、コカインや大麻を使った方がいい」──精神的な苦痛やストレスに苦しむ10代や20代の若者の間で流行っている市販薬を過剰に摂取する“オーバードーズ”通称 “OD”。それ自体も危険な行為だが、男は相談者の女性にこんな耳を疑うようなアドバイスをしたという。
コカインを所持したとして、田中芳秀容疑者(44)が麻薬取締法違反(所持)容疑で逮捕された。田中容疑者は東京・歌舞伎町の「トー横」に出入りする若者らを支援する公益社団法人「日本駆け込み寺」(東京都新宿区)の元事務局長。若者を支援する立場にありながら、訪ねてきた相談者に薬物の使用を勧めていたというから驚きだ。
全国紙社会部記者は事件をこう解説する。
「田中容疑者は5月18日午後5時30分ごろ、東京都新宿区大久保の路上で警察官から職務質問を受け、コカイン1袋を財布の中に所持していたことから現行犯逮捕されました。田中容疑者と一緒にいた20代の女も、薬物反応があったため同法違反(使用)容疑で緊急逮捕されています。女は日本駆け込み寺に相談に来ていた利用者でした」
日本駆け込み寺のホームページによると、同法人は代表理事の玄秀盛氏が2002年1月に設立したNPO法人「日本ソーシャルマイノリティ協会」に起源を持ち、2011年7月に一般社団法人「日本駆け込み寺」として設立された(2012年11月に公益社団法人化)。
当初は歌舞伎町の風俗店に勤務する女性の相談者が多かったが、トー横に集まる少年少女らが違法薬物に手を出したり性犯罪に巻き込まれたりする「トー横キッズ」問題が社会問題化すると、日本駆け込み寺もトー横キッズへの対応が多くなっていったという。
事務局長という肩書きだった田中容疑者はもともとは、トー横などを取材するフリーライターだったという。元関係者が明かす。
「元々は取材で来ていたんだけど、3~4年前から一緒に活動をするようになりました。田中は主にはホスト問題に取り組んでいました。売り掛けで困ってる子とかの。3月に食事したときも、仕事の話ばかりでとても熱心に仕事に取り組んでいるという印象でした」
駆け込み寺で、共同で代表理事を務める清水葵氏も口を揃える。