(ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト 星良孝)
パーキンソン病特化の介護住宅を展開する企業サンウェルズ。2024年9月に不正請求が共同通信により報じられ、その後、上場前から不正請求を続けていたことを公表し、複数年にわたって決算を下方訂正するに至った。
2025年5月1日、同社は不実記載に基づき上場していたと東京証券取引所から指摘され、上場維持のためには、2026年4月までに同所の再審査が求められることになった。1年間は猶予期間となる。上場契約違約金6240万円の支払いを求められた上、審査の結果次第では上場廃止となる可能性も出ている。
不正発覚の直前2024年8月に3000円近くあった同社の株価は急落。2025年5月には500円台で上下している。
■ MeTooで不正発覚の連鎖
2024年1月以降、いわば「公金チュウチュウ企業」によるとみられる、医療費や介護費の不正請求問題が続々と明るみに出ている。その舞台は、病気を抱える人々を住まわせる住宅である。
公金をむさぼる企業が医療と介護の制度に巣くっている日本の恥部が、白日の下にさらされた形だが、一連の動きの中でも、上場企業が組織的に不正をやっていたという点で、サンウェルズは大規模かつ悪質である。
端緒になったのは、2024年1月からの共同通信の継続的な報道だ。当初は、精神障害者や知的障害者を対象にした訪問看護で、過大請求が行われていることを伝えるものだった。
その後、1カ所の報道が出ることで、“MeToo”運動と同じく、相次いで不正が内部告発される連鎖が起きた。ひどいときには架空の医療行為や介護行為がでっち上げられていた。
企業が組織ぐるみで大規模に不正を行っていたというのは異常事態だ。
サンウェルズが展開している施設はパーキンソン病に特化した住宅で、病気を抱えた人を集合住宅に住まわせ、医療や介護、障害福祉サービスを提供している。病気の人々にとっては、こうした施設は必要な存在だが、医療や介護の制度を悪用し、公的な資金を搾取しているのであれば大きな問題である。