ロシア軍がウクライナ戦争で運用中の北朝鮮製170ミリM1989コクサン自走砲の実際の発射場面が、初めて公開された。
ウクライナの軍事専門メディア「ミリタルニ(Militarnyi)」が20日に明らかにしたところによると、通信アプリ「テレグラム」を通して同日このような動画が公開され、ロシア軍が北朝鮮製自走砲を実戦運用している事実が確認された。当該動画には、新たに創設されたロシアの砲兵旅団が保有するM1989コクサン自走砲が砲撃を加える様子が収められている。砲弾が発射された後、自走砲が大きくぐらつく場面もキャッチされた。併せて公開された写真では、自走砲が対空兵器防護用の丸太のキャノピー(ひさし)の下で待機している様子や170ミリ砲弾も確認された。動画を公開したテレグラムのチャンネルは「この砲弾はソ連式砲弾のデザイン的特徴を持っている」と説明した。
ウクライナの軍事専門家、アレクサンダー・コバレンコ氏はテレグラムを通して「砲弾の威力、射程や精度の面で疑わしい部分が多い」と評価した。「(動画で)自走砲は発射後に大きくぐらついて、まるで紙で作ったかのように見える」「これは安定性や正確性の問題などを引き起こしかねない」とコバレンコ氏。また「自走砲の射程はこれまで30キロを超えたことがないのに射程40-60キロといわれている点は、誇張されたものに見える」「砲弾の口径は170ミリだが、152ミリよりも強力ではない」とも述べた。
ロシア軍はこれまで、ウクライナの最前線で北朝鮮製の自走砲を運用してきたが、このように近い距離で実際の発射場面が捉えられたのは今回が初めて。ただし、当該動画の具体的な撮影時期や場所は公開されていない。このニュースを「X(旧ツイッター)」上でシェアしたあるアカウントは、コクサン自走砲の特性について「長距離打撃能力を提供はするが、高火力の弾薬を使用するので砲身の摩耗が早い、という砲兵らの報告がある」と伝えた。
昨年末にテレグラムなどを通して、北朝鮮製自走砲を運ぶロシアの貨物列車の動画が公開されたことがある。当時、「フォーブス」は「北朝鮮は今冬までロシアが独自生産できる口径の砲弾を主に供給してきたが、前線に投入されるM1989コクサン自走砲が増えるにつれ、ロシア軍の北朝鮮製兵器への依存度は深まるだろう」と分析していた。今年4月には、ロシア軍が西部クルスク地方でウクライナの一人称視点(FPV)ドローン攻撃によりM1989コクサン自走砲1門を喪失した、という報道もなされた。
M1989コクサン自走砲は、北朝鮮が従来使用していたM1978コクサンに新たな車体を組み合わせた大口径・長距離自走砲で、2018年に平壌の軍事パレードに登場したことがある。M1989コクサン自走砲は、北朝鮮が独自開発したと推定される170ミリ砲弾を使用する。高性能爆薬(HE)破片弾を使用して最大43キロまで攻撃が可能で、ロケットアシスト(RAP)弾を使えば54-60キロまで射程が伸びるといわれている。
「ウクラインスカ・プラウダ」など現地メディアは「もともとは非武装地帯の北からソウルを攻撃できるように設計されたが、現在はロシア軍がウクライナとの戦争で砲兵の損失を相殺するためにこれを使っている」と報じたことがある。
イ・ヘジン記者