日本の新米、ロンドンで「5キロ3000円台」 英国のほうが安い逆転現象の謎


【関連画像】19.99ポンドに値下がりした「あきたこまち」

 5月5日、メールに新米のセール情報が届いた。秋田県産「あきたこまち」が5キログラムで19.99ポンド(約3900円)――。送り主は英国で日本食のオンライン宅配を手掛ける「WASO」である。

 筆者がロンドンに赴任したのは2024年4月。この都市はただでさえ物価が高い。近ごろは円安の影響も加わって、日本の食品の価格を円換算すると、その多くが日本と比べ2~3倍となる。だが、日本米に関しては様相が異なってきた。ロンドンにおける小売価格が下がり続けているのだ。

●北海道産「5キロ3500円」も

 例えば、冒頭のWASOについて言えば、秋田県産あきたこまちが24年6月時点で5キログラム29.99ポンドだった。同8月に22.99ポンド、同12月末に21.99ポンドまで下落し、25年1月初旬はついに19.99ポンドと円換算で4000円を割り込んだ。7カ月で「33%オフ」のインパクトは大きい。

 24年12月中旬には、ロンドン中心部の日本食材店「らいすわいんショップ」も、コメのセールを開催していた。北海道産「ゆめぴりか」が5キログラム19.98ポンド(約3900円)、北海道産「ななつぼし」が同17.80ポンド(約3500円)。重いので買って帰るのは断念したが、「今が買い時なのではないか」と真剣に考えた。

 一方、日本ではコメの価格が上がり続けている。農林水産省によると、直近のコメの平均店頭価格(5月5~11日)は4268円。17週連続で値上がりした後、1週間だけわずかに下落したが、再び上昇。前年同期比2倍の水準にある。政府備蓄米が店頭に並び始めても、米価は高騰の一途をたどっている状況だ。

 1年ほど前までロンドンでお値打ちのコメといえば、イタリア産コシヒカリ「ゆめにしき」だった。しかし、冒頭のあきたこまちは新米である。日本から直輸入された、正真正銘の日本米だ。日本から直線距離で9000キロメートル以上も離れたロンドンのほうが、日本のコメを安く手に入れられる状況はいびつに感じる。

 なぜ、米価の逆転現象が生じているのか。いくつかの要因が考えられる。最も大きな変化は、日本から英国へ輸出するコメの関税がなくなったことだ。



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