ファミリーマートの「白生パン」シリーズが好調だ。3月の発売から13日間で累計500万食を販売し、コンビニパン市場で存在感を示している。通常なら焼き色が付くパンを白く仕上げたことも話題となり、若年層や女性ファンを増やしている。なぜハマる人が多いのか、ヒットの背景を追った。
【画像】ファミマの「白生パン」ってなに? もちもち×クリームの“映え断面”、焼かないのにふっくら! ちょっと気になる真っ白なパンを見る(11枚)
ファミマのパンカテゴリーは、2024年に過去10年で最高の売り上げを記録した。特に、2023年に発売された「生コッペパン」を皮切りに展開する「生」パンシリーズは、2年間で累計2億6000万個を販売する人気商品に成長。その成功体験をもとに生まれたのが、「白生パン」シリーズだ。
3月25日に「白生コッペパン(つぶつぶいちご&ホワイトチョコ)」「白生クロワッサン(ダブル生チョコ)」「白生フランスパン(北海道産ダブル練乳ミルク)」(各168円)の3種類を発売。
さらに「白生クリームパン(ダブルカスタード)」(158円)、「白生ドーナツ(チョコホイップ)」(145円)、「白生コッペパン(トリプルチーズ)」(158円)も加わり、ラインアップが広がった。
同シリーズの特徴は、焼いても白い見た目と、しっとりもちもちした食感だ。「生コッペパンから派生する形で発売したところ、白いパン生地への需要を感じた」と、商品本部スイーツ部副部長の鈴木崇義氏は振り返る。
特定のターゲットを設定せずに発売するため、定番のコッペパンやクロワッサンを展開したところ、狙い通りに幅広い層からの支持を得た。さらに「パンが白い」というインパクトにより、これまで男性客が中心だった同社のパンカテゴリーの購買層において、若年層や女性客の割合が増えるという変化も見られた。
購入者の「体験価値」の向上が狙い
なぜ、あえて「白く」したのか。そこには、視覚的な驚きと新食感によって、日常的なパン購入に新たな体験価値を加えようという狙いがあった。「街のベーカリーでは商品を選ぶ楽しさがある。コンビニでのパン選びにも楽しさを提供したかった」と鈴木氏は説明する。
通常、パンは焼く過程でタンパク質と糖がメイラード反応を起こして焼き色が付き、さらに糖が単体でカラメル化反応して色が付く。焼き色がきれいに付くのがいいパンとされているが、あえて色を付けずに焼き上げる工程で試行錯誤を繰り返し、開発には約6カ月を要した。
「白生パン」を実現した背景には、2つの工夫がある。1つは、低温でじっくり焼く製法を採用したこと。通常より低い温度でやや長めに焼き上げることで、焼き色を抑えつつ、パンの膨らみを確保した。
もう1つは、色が付きづらい糖に一部置き換えたことだ。しかし、この糖はイースト(パン作りに使われる酵母)の栄養源にならないため、発酵に必要な通常の糖とのバランスが重要だった。繊細な配合調整によって、白さと独特の食感を両立させることに成功した。