就任早々、備蓄米の入札を中止し、任意の業者に売る「随意契約」を開始させた小泉新農林水産大臣。農水省は27日、2022年産への申し込みが殺到し、予定の20万トンに達する見込みだとして、すべての受け付けを一時休止。残った2021年産の約10万トンは、これまでの大手小売ではなく、中小のスーパーや米穀店に対象を変え、新たな随意契約として30日にも受け付けを始める方針だ。
小泉大臣の号令1つで流れが変り始めた“令和のコメ騒動”。任命直後、何度も繰り返したのは「組織・団体に忖度しない判断をすることだと思う。今までの日本の農政を考えたときに、ややもすると組織・団体にあまりにも気を遣いすぎた」。この“組織・団体”を指しているとみられるのが、農業協同組合「JA」だ。農業者を中心とした「組合員」で農家と生活を守ることなどを目的に組織されており、主な事業の1つは「販売事業」。農産物を集めて卸売業者や小売業者に卸したり、直接消費者に販売することで、生産者が販売先に悩むことを解消する重要な役割を担っている。
しかし今、ネットでは小泉大臣に追随するかのように、備蓄米の流通の遅れや、そもそものコメ価格高騰をめぐってJAへの批判が噴出している。「JAが介入するからコメが流通しないんだろ」「てかJAのせいでコメ騒動が起きたのでは?」「米高騰の元凶JA」。
果たして、その通りなのか。『ABEMA Prime』で、農家出身で元農林水産省官僚の自民党・進藤金日子参院議員、JA稲敷元理事・大塚則昭氏、令和の百姓一揆実行委員会事務局長・高橋宏通氏、大規模コメ農家・ヤマモト氏の4人を招いて議論した。
■備蓄米のスタックはJAに原因?
これまでの備蓄米は、オークション形式の競争入札で3回出品され、そのほとんどをJA全農が落札。JAグループを含む卸業者を通して小売店に並んでいたが、時間もお金もかかっていたという。今回の随意契約では、小売店に直接売り渡しをすることで金額を抑えながらスピードアップも図り、6月初旬に店頭に並ぶということだ。
ただ、「米流通と在庫」の去年との比較を見てみると、生産段階は在庫+9万t(生産量+18万t、出荷+14万t、消費・無償譲渡−5万t)、集荷段階は在庫+3万t、(JA系統−31万t、JA外/直販+44万t)、末端への流通は在庫+7万t。在庫合計は去年比で「+19万t」も上回っていた。
そんな中、備蓄米のスタックはJAに原因があったのか。進藤議員は「その指摘は当たらない。集荷段階でJAには31万t集まっておらず、備蓄米が補給されることで流れていくと思うだろう。卸売段階では4万トンの在庫があるわけだが、ここでは精米や袋詰めなどが発生し、コストがどんどん上がっていく。すでに高い米を持っている卸は、安い備蓄米が来ればブレンドする。卸が意図的に止めているという話ではなく、時間がかかっている」との見方を示す。
一方、大塚氏は「卸のルートが全然違う」と指摘。「JAは生産者から買い、コープを通じて売っているが、これは全体の3〜4割。6割の民間は、コンビニやファミレスなどと契約している数量を出す必要があって、余った分をスーパーに出している。その順番が違うから、批判はできない」とした。