加齢による脳細胞の萎縮は避けることができませんが、脳神経外科医の石川久氏は「残っているほかの神経細胞が鍛えられていれば、脳の役割をカバーしてくれる」と言い切ります。
そんな石川氏が脳神経を鍛えるために推奨しているのが「新聞を読むこと」。本稿では、同氏の著書『最近、「あれ」「それ」が増えてきた人のための 70歳からの脳が老けない新聞の読み方』から、その読み方に必要な「ちょっとしたコツ」を紹介します。
■「脳細胞の萎縮」をカバーしてくれる神経細胞
私は、これまでに1万人以上の患者さんの脳を診てきました。その中に、80歳、90歳を超えているのに、頭脳明晰で、元気な患者さんはたくさんいました。
一方で、60歳に満たなくても記憶や言動があやふやで、認知機能が落ちている患者さんもたくさんいました。
仮に、前者をAさん、後者をBさんとしましょう。このふたりの脳を調べてみると、どちらの脳が委縮していると思われますか?
ほとんどの人は「Bさん」と答えると思います。ところが、脳の画像を調べてみると、萎縮が大きいのはAさんなのです。なぜ、脳の萎縮が進んでいるAさんがしっかりしていて、Bさんの認知機能は低下しているのか。それは、脳細胞に秘密があります。
人が年齢を重ねると、脳細胞の中にある神経細胞は、少しずつ減っていきます。一度減った神経細胞は元には戻らないので、脳の萎縮が起こります。すると認知機能が低下していきます。
しかし、人間の脳は、とてもよくできています。神経細胞の数が減っても、残っているほかの神経細胞が鍛えられていれば、脳の役割をカバーしてくれるのです。
つまり、Aさんのほうが高齢なので脳は萎縮していたが、残りの神経細胞が鍛えられていたので、Bさんよりもしっかりしていたのです。
このように、普段から脳の神経細胞を鍛えておけば、認知症の発症リスク、認知機能の低下を防ぐことができます。
■新聞を「正しく」読めれば認知症リスクを下げられる
そこで私が提案しているのが「新聞を読む」ことです。新聞を読むと、短期記憶力、集中力、注意力、基礎思考力、意欲など、5つの脳力が鍛えられます。
同じ活字であっても、本や雑誌とは違って、新聞にはさまざまなジャンルの記事が掲載されています。
興味のある情報だけでなく、興味のない情報や、知らない情報を知ることもできるので、脳にはより刺激的です。まんべんなく脳を使うことで、脳の血流もよくなります。