心臓マッサージをすると、波うつように傷口から血が…幼い息子を残酷に殺害された被害者家族のもとに届いた“加害者”からの“リアルなメッセージ”


【写真】この記事の写真を見る(2枚)

 和歌山県紀の川市で2017年、幼い息子を残酷に殺害された森田悦雄氏。加害者に下された懲役16年の判決に憤り、加害者親の無反省な態度に絶望する同氏は、「心情等伝達制度」を利用し、加害者の考えを聞いた。いったいどんな言葉が返ってきたのか……。

 犯罪被害当事者、被害者遺族を長年にわたって取材する藤井誠二氏による『 「殺された側」から「殺した側」へ、こころを伝えるということ 』(光文社新書)の一部を抜粋し、紹介する。(全4回の4回目/ はじめから読む )

◆◆◆

「なぜ、たったの16年なのか」

 命日には報道陣が来るので、そのときは前もって逃げてしもて、たまたま居るときに記者が訪ねても“そのことについてはお話しできません”と答えるだけです。仏に仕える身(編集部注:加害者の父は仏教系大学の教授を務めていて、次期学長と目されていた人物だった)で何を考えているのか。私が何を聞いても黙ったままです。事件後、もと地区の区長だったが辞めましたし、大学も辞めています」

 森田は息子と病院で対面したときのことになると、早口の関西弁が詰まるようにゆっくりになる。

「(息子が搬送された)病院に行ったときに、あんな傷をお父さんに見せられないと……。(医者から)“お父さん、体はずたずたに切られているのでお見せすることはできませんが、息子さんの大事な頭の部分を見てあげてください”と言われました。全身は包帯でぐるぐる巻きだったので子どものからだは一回も見ていませんが、顔はきれいな状態でした。

 全身を巻いた包帯は、警察がうちに持ってきてくれた。臭いもすごいけど、出血のあともすごかったです。第一発見者の妻が看護師やから心臓マッサージしてくれて、そしたら波うつように傷口から血が出てきたと言うねん……。今までの仕事で、こんなこと初めてだと。かわいそうで、なんと言ったらいいのか……冷たくなっていく息子の手を握って、よく頑張ってくれてありがとうと妻が声をかけましたが、それが別れの言葉になってしまいました」



Source link