「現場の状況がわかっていないんだ、という印象しかないですね」と、あきれ顔で言ったのは東京都内の小学校で特別支援学級を担任しているAさん(30代)だった。
特別な支援を要する子どもたちが在籍する特別支援学校や特別支援学級を担任する教員には、給与月額の3%相当、金額にして1万円前後が「調整額」として支払われている。通常学級の担任より負担が大きいということが、調整額が支払われている理由なのは言うまでもない。
この調整額を半分にするという動きがある。2024年8月に中教審(中央教育審議会)が「(調整額の)検討をすすめることが考えられる」と答申したのを受けて、今年4月15日の閣議後記者会見で阿部俊子文科相が「半減とする」と具体的な方針を示したのだ。2027年1月から0.75%ずつ減らし、28年度には1.5%相当にする予定だという。現在の約1万円が、28年度には約5000円になってしまうことになる。
“調整額半減”について現場の声は
さて、“調整額半減”を当の特別支援学級の担任はどう受けとめているのか。訊いてみて戻ってきたのが、先ほどのAさんの答えだったのだ。現場の忙しさやたいへんさを無視した方針でしかない、というわけである。Aさんが続ける。
「通常学級は同じ歳の子が集まっていますが、特別支援学級では複数の違う学年が同じ教室にいます。それぞれの学年に合った授業をし、学級運営もしなければならないので、けっこうたいへんです。しかも、あるときは1年生が多かったり、ある年はまったくいなかったりとバラツキが大きいので、その状況に合わせていくのも簡単ではありません。さらに通常の学習にくわえて、支援のための特別指導の時間もあります。授業自体も足りないですし、たくさんの授業があっても授業準備はしなければいけないので、かなりの時間が必要です」
通常学級の保護者対応より工数が多い
学習面だけではない、通常学級の担任にはない苦労もある。それが、保護者対応だ。通常学級の保護者対応と、ちょっと違っているからだ。
「支援が必要な子の家庭は、やはり支援が必要だったりもします。たとえば提出物のお願いをプリントで連絡しても、家の方がうまく受けとってもらえなくて、表現を変えて再度お願いしたり、電話したりも、しょっちゅうです。ここにも、かなりの時間をとられてしまいます。こうした家庭支援は、まず通常学級では無いことですね」
そして、教育委員会から降りてくる調査などで提出しなければならない書類も通常学級に比べて多いという。どういう支援が必要な子がいるのか支援別の人数を知らせろ、といった書類づくりに時間のかかるものを、いろいろと要求されるのだ。こうしたアンケートや調査への回答は、通常学級でも多く、教員の多忙化の原因のひとつにもなっている。それ以上に多いのだから、間違いなく多忙化につながっている。こんなことをやっていては、定時で帰れるわけがない。