フィリピンのマニラ市内の道路の排水溝からはい出る姿で話題になった女性ホームレスが政府当局の支援を受けることになった。だが単発の支援はホームレス問題の根本的解決とは距離があるという意見も出ている。
シンガポールメディアのストレーツタイムズなどによると、先月26日にマニラの金融中心地であるマカティ地域の大通りの排水溝から女性がはい出る姿がアマチュアカメラマンに撮られた。
ブラウスとデニムのショートパンツ姿の女性は、周辺の歩行者とドライバーが驚いてぼうぜんと見守る中を走ってどこかに消え去ったとカメラマンは伝えた。
このカメラマンが自身のインスタグラムにこの場面を写した写真を投稿すると1400人以上が「いいね」を押すなど話題になった。
これを見たネットユーザーは、井戸の中からはい出してくるホラー映画『リング』の貞子、映画『IT/イット』で道端の排水溝に隠れている悪魔ペニーワイズのようだという反応を見せた。
だがこの女性がマニラの人口1400万人のうち300万人以上を占めるとされるホームレスの凄惨な現実を見せるという指摘も提起された。
写真が話題になると、フィリピンのマルコス大統領はこの女性の状態を確認するよう政府当局に指示し、社会福祉開発省がマニラのスラム街で女性を見つけ出した。
ごみを集めて売り生計を立てているというローズという名前のこの女性は、自身が下水道に住んでいるのではなく、排水溝に落としたカッターの刃を探すために入っただけだと話した。これに対し警察当局はローズさんのようなホームレスが下水道を通路として利用していると説明した。
警察はローズが出てきた下水道からシャツなどを見つけたりした。
フィリピンのガチャリアン社会福祉開発相は先月29日にローズさんと会い、彼女が雑貨店を開けるよう8万フィリピンペソ(約20万円)を支援すると明らかにした。また、ローズさんの配偶者が溶接技術を持ちながら働き口がなく路上生活をしているとし、仕事を探すように助けると付け加えた。
だがこうした単発の支援でホームレス問題を根本的に解決するには限界があるという意見がある。
あるネットユーザーはSNSに「これは全地域社会の問題。なぜその場しのぎで解決しようとするのか」と反問した。
別のネットユーザーも「苦しい人たちを助けるのは良いことだが、先に彼らに教育を提供し、家と食料を確保した後に働いたり事業を始められる能力をつけさせなければならない。適切な教育や訓練なくお金だけ与えるならただの浪費」と話した。