中米パナマ沖にある無人島・ヒカロン島で、驚くべきサルの行動が記録されたと、Fox5などが報じています。2022年から2023年にかけて森の中に仕掛けられたカメラの映像には、オマキザルのオスが、別種であるホエザルの赤ちゃんを背中に乗せて歩く姿が複数回映っていたのです。
CNNによると、この異常な行動を最初に発見したのは、マックスプランク動物行動研究所に所属する行動生態学者、ゾーイ・ゴールズボローさんです。最初はオマキザルの赤ちゃんだと思っていたそうですが、体の色に違和感を覚え、確認したところ、実際にはホエザルの赤ちゃんであることが判明しました。
調査によると、2022年1月から2023年3月の間に、少なくとも11匹のホエザルの赤ちゃんが誘拐されていたことが明らかになりました。最初にこの行動をとったのは、口元に傷があることから「ジョーカー」と呼ばれるオマキザルのオス。その行動を見た他の若いオスたちも、次々に同様の行動を示しました。
しかしながら、オマキザルのオスたちが赤ちゃんに餌を与えたり、世話をしたりする様子は確認されておらず、赤ちゃんたちは最終的に栄養を得られず命を落としてしまったとみられます。捕食の痕跡もなく、明確な目的が見えないことから、研究チームはこの行動を「文化的流行(カルチュラル・ファッド)」の可能性があると考えています。
ヒカロン島は捕食者がいない孤立した環境であり、サルたちは安全に自由な行動ができるため、若い個体が退屈しのぎに奇異な行動に走った可能性も指摘されています。実際、同島では石を使ってナッツを割るといった文化的な道具使用が、若いオス個体によってのみ確認されています。
「この現象は、人間が他の生物に対して無意識に害を与えてしまう行動にも似ているように感じます。まるで私たち自身を映す鏡のようです」とゴールズボローさんは語ります。今回の発見は動物行動学に新たな問いを投げかけています。