令和の米騒動、救世主はイオンのカルローズ米? 一方で秋の新米5キロ4000円以上の見方も


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 今回イオンが発売するのは、カルローズ米を100%使用した新商品「かろやか」。価格は4キロあたり税込み2894円で、5キロ換算すると約3620円。5月12~18日に全国のスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格(税込み)が4285円と過去最高値を叩き出す中、手に取りやすい価格となっている。 

 中粒種であるカルローズ米は、長粒種のインディカ米と比べてパサパサ感が少なく、日本人にも比較的受け入れやすいとされる。同社は4月に米国産と国産のブレンド米を発売したところ、「日本のお米と遜色(そんしょく)ない」と好評だったため、米国産でもニーズがあると確信。カルローズ米単独での販売に踏み切った。 

 とはいえ、国産米の代替品ではなく「新たな食の選択肢」として、ピラフやライスサラダなどカルローズ米に適した食べ方を提案していくという。 

「我々としても、日本の農業を大切にしたい気持ちはあります。『かろやか』を販売するのは、コメの需給がひっ迫している都市部を中心とした約600店舗の予定です」(同社広報部) 

 カルローズ米を取り扱うのは、あくまでもコメ価格高騰を受けた時限的措置だという。だが、農業経済学に詳しい東京大学大学院の鈴木宣弘特任教授は、同社のカルローズ米販売について、「日本の農業にとってのインパクトは少なからずある」とみる。 

 国内最大規模のスーパーマーケットであるイオンで販売されれば、当然、多くの人に認知される。少しでも安いコメを求めて、国産米からカルローズ米に切り替える消費者も少なくないだろう。その結果、ほかの小売りもビジネスチャンスと捉えて、カルローズ米の輸入を始める可能性がある。コメ高騰から人々の生活を守るための措置は待ったなしだが、“その場しのぎ”で輸入米に飛びつけば、日本のコメ農家が打撃を受けかねない。 

「コメ価格高騰の根本的原因は、生産者の減少によるコメ不足です。カルローズ米のニーズが広がることは、長い目で見れば、国産米の生産にブレーキをかけて価格高騰を助長することになる」(鈴木特任教授) 

 コメ不足の責任は、減反政策をはじめ生産量を抑制してきた日本の農政だけでなく、安いコメを求め続けた小売業者や消費者にもある。コメの値段は過去30年にわたり下落基調であり、“作ってももうからない”状況が農家の疲弊を招いたのだ。 

 鈴木特任教授は以前、ある仲卸業者が、こうボヤいていたのを聞いた。 

「我々はイオンが買ってくれる値段から逆算して、仕入れている。農家さんに払える金額は、価格形成力を握っているイオン次第と言っても過言ではない」 

 ここでは小売りの代表例としてイオンの名前が挙がったようだが、“安さ”が歓迎される消費者心理に応えようと、小売りがコメの買い取り価格を引き下げ、農家に負担を強いてきた構図があるようだ。 

 取引先からの指摘を、同社はどう受け止めるのか。広報担当者はAERAの取材にこう応じた。 

「当社がリーズナブルな価格で商品をご提供できるのは、規模のメリットを利用して物流を効率化するなど、日々知恵を絞っているからです。農家さんを買い叩き、その犠牲の上に成り立っている価格だという認識はまったくありません」 



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