人の死を悲しみすぎると病気になる?和田秀樹氏が警鐘、高齢夫婦が立て続けに亡くなる理由


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● いつまでも人の死を 悲しむ必要がない理由

 長く生きれば、それだけまわりの人が亡くなっていきます。多くの死を見送ります。自分が死ぬことを想像するのと同じように、夫や妻、親、子供といった家族の誰か、友人、ペットなど、身近な関係の誰かを死という現象で亡くしてしまうことは、耐えがたい悲しみをもたらします。

 これまでずっと隣にいた場所にぽっかりと穴があく。その状況に慣れず、動揺するのはよく分かります。そうなのですけれども、そんなことに怯まないでください。くじけないでください。ましてや、いつまでも悲嘆に暮れて、泣き続けるなどということは、バカのすることです。即刻やめてください。その悲しみの理由の1つは、脳内のセロトニンが減少しただけです。

 隣に人がいないからまったく眠れない。食欲が全然わかない。そんな状態なら、それはもう、普通に考えてうつ病なので、我慢しないで、病院にかかるべきです。早めの診断が肝心です。ヘボな医者に当たらない限り、対象喪失型のうつ病は治ります。

 一般的に、喪失体験のショックは、数カ月から1年ほどで収まるとされています。いつまでも「あの人がいれば」「あの人がいてくれたら」と考えてしまうのは、ないものねだりに他なりません。

 どうせ、人間は必ず死ぬんです。みんな死ぬんだからあきらめることも肝心です。みじめに置いてけぼりにされた。ひとり遺されたなどと考える必要はありません。開き直ることも重要だと思います。

 こう考えてください。ひとりになったということは、思い通りの人生が歩めるということです。解放されたといってもいいでしょう。清々した。そう感じる人もいるくらいです。ひとりを恐れる必要はないと、考えかたを変えてしまうのです。

 自分を束縛するものからどんどん抜け出して、自由に生きる。嫌なこと、我慢しなければいけないことはもう何もないと考えると、気持ちに余裕が生まれて、楽になります。楽になると、ひとりぼっちが気にならなくなるのです。

 これからは、やっと自分のために生きられるようになったのです。人間にとってこれほどの幸せはありません。

● 喪失に立ち向かうため 大切なこと

 大切な人が亡くなったとき、心にぽっかり穴があいたような喪失感が生まれます。

 喪失体験には急性期と慢性期があります。四十九日までは、心が落ち着かず、悲しみに暮れてしまうのは仕方がないことです。それでも、ほとんどの人は立ち直っていきます。

 私が現時点で診ている女性の患者さんの話をしましょう。もともと老人性のうつ(編集部注:65歳以上の高齢者が発症するうつ病)のある方でしたが、夫を亡くしてしまってから、状態が非常に悪くなってしまいました。

 さすがの私も「これ、本当によくなるのかな」、そんな不安が胸をよぎるほどだったので、どれほどひどい状態だったのか、お察しください。

 女性は、まったく何もしなくなり、外にも1歩も出られなくなってしまいました。それでも、きちんと薬を出し、生活のアドバイスを続けていたら、あるとき、霧が晴れたかのように、急によくなったのです。

 今は、二世帯住宅にするため、家を建て替えたり、旅行を楽しんだりしています。夫を亡くす前より元気な状態だといえます。これが現実です。

 人が死を受け入れるまでには、否認→怒り→取引→抑うつ→受容という5つの心理的段階を踏むといわれています。インターネットなどで調べると、こう書かれていることでしょう。概ね、この通りです。

 しかし、だからといって、悲しみに備えてびくびくと策を練るようなことは、私は必要ないと思っています。



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