高市首相の「台湾有事」発言が日中関係と日本経済に与える影響:ひろゆき氏の見解と世論

高市早苗首相による「台湾有事」に関する国会答弁から2週間が経過し、日中関係は緊張の度合いを高め、日本国内の産業に深刻な打撃を与えています。台湾情勢を巡る日本の姿勢が、中国からの経済的威圧を招く中、実業家の西村博之氏(ひろゆき氏)は、一連の動きが日本にもたらした「得失」について経済的な合理性から言及し、大きな反響を呼んでいます。本記事では、高市首相の発言とその影響、日本国内の多様な意見、そしてひろゆき氏の分析に焦点を当て、複雑化する日中関係の現状を深く掘り下げます。

高市早苗首相の「台湾有事」発言と中国の強硬な反発

高市首相は11月7日の衆院予算委員会で、台湾情勢に関して「(中国が)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても(日本の)存立危機事態になりうる」と答弁しました。この発言は、台湾を巡る状況次第で、日本が集団的自衛権の行使に踏み切る可能性を示唆するものであり、台湾を「核心的利益」と位置付ける中国はこれに猛反発しました。

香港メディアの報道によれば、中国政府が訪日自粛を呼びかけた結果、これまでに約49万件もの日本行航空便がキャンセルされたとされています。さらに、19日には今年6月に再開されたばかりの日本産水産物の輸入(10都県産を除く)が再び停止されることが日本側に通達されました。政治部記者は、高市氏が発言を撤回しない構えであることから、中国側は今後も次々と対抗措置を講じてくる可能性が高いと指摘しています。

日本国内の反応:経済的懸念と「脱中国」の機会論

中国側の反発に対し、日本のSNSでは日本経済の悪化を懸念する声が噴出しています。一方で、「国内旅行がしやすくなった」「他にも販路はある」といった楽観的な声も多く、今回の事態を「好機」と捉える見方も存在します。

小野田紀美経済安全保障担当相も18日の会見で、「何か気に入らないことがあれば、すぐ経済的威圧をかけるところに対して依存しすぎるのは、サプライチェーンリスクだけではなく、観光に対してもリスクはあるので、リスク低減を常日頃考えながら、経済を回していけたらいいと個人的に考える」と述べ、中国への過度な経済的依存を見直す必要性を訴えました。

ひろゆき氏が語る「得失」:経済的合理性からの視点

19日配信の『ABEMA Prime』では、高市氏の答弁に対する中国側の対抗措置が特集され、コメンテーターとして出演したひろゆき氏(西村博之氏)が水産物輸入停止について率直な意見を述べました。

ひろゆき氏は、「何を得て、何を失ったかでいうと、高市首相の発言で日本が得たものってあんまりないんですよね。なんか、一部支持者が感情的にすっきりしたというだけで、経済的なマイナスは明確に存在するので。そういう意味では、日本人の大多数にとって損のあることをやった」と断じ、高市氏の発言が日本経済に明確な損失をもたらしたとの見解を示しました。

実業家ひろゆき氏(西村博之氏)のポートレート実業家ひろゆき氏(西村博之氏)のポートレート

高市氏の答弁が中国で問題化していることを受け、外務省の金井正彰アジア大洋州局長が18日に中国外務省の劉勁松アジア局長と北京で協議を実施しました。この協議終了後、両者が談笑する様子を現地国営メディアが報じ、劉氏が両手をポケットに突っ込み、金井氏が頭を下げたように見える映像が日本のSNSでも波紋を呼びました。『ABEMA Prime』では、この場面が「中国側優位をアピールするプロパガンダの一環」と解説されましたが、ひろゆき氏はこれに対し「頭下げるのなんかタダなんだから、いくらでも下げて、それで経済がよくなるなら、僕はその方がいいと思いますけどね。だから(金井氏は)いい仕事しているなと思いますけどね」とコメントし、経済的利益のためには外交上の柔軟性も重要であるとの持論を展開しました。

日本と中国は貿易において特に結びつきが強く、高市首相も10月31日の日中首脳会談では、関係発展を目指す「戦略的互恵関係」を推進することで習近平国家主席と固い握手を交わしたばかりでした。それだけに、今回の高市氏の答弁で関係が揺らいだことに落胆する声が多く聞かれます。

ネット上の議論:ひろゆき氏への賛否両論

ひろゆき氏の発言を取り上げたネットニュースのコメント欄には、賛否さまざまな反応が寄せられました。

彼の意見に賛同する声としては、「一部の中国嫌い支持者のガス抜きになっただけで、日本の国益にはマイナスしかない」「ごくごく一部の支持者におもねたから成せただけ」「日本が得たものは国民のストレスが発散できただけで、経済的には打撃を受けただけにすぎない」といったコメントがあり、感情論ではなく合理的な視点から経済的損失を指摘する意見が目立ちました。

一方で、ひろゆき氏の持論に対する疑問の声も見られます。高市氏は首相就任前から「対中強硬派」として知られ、それが絶大な支持を集めてきた側面もあります。そのため、「ばーか中国と距離をとるべきであるということが明確になったことが最大の得たことだよ」「ものすごく大きな利益を得たと思います。これまでのC国に偏った営業戦略を、無理やりかもしれませんが見直すきっかけになったことです」「目先の物理的なマイナスよりも、これまでの政権では得られなかった日本人としての自信や自尊心、そこから来る将来的なプラスを期待する声が今回得られたプラスと考えるべきだと思う」といった意見が寄せられ、今回の問題を「脱中国」を考える上で重要な機会と捉え、精神的・長期的な国益を重視する見方も示されています。

まとめ

高市早苗首相の「台湾有事」に関する発言は、日中間の政治的緊張を増幅させ、日本経済に具体的な影響を及ぼしています。航空便のキャンセルや水産物の輸入停止といった中国の対抗措置は、日本国内で経済的懸念を呼び起こす一方で、一部からは中国への経済的依存を見直す「脱中国」の機会と捉える声も上がっています。

実業家ひろゆき氏は、今回の件で日本が得たものは少なく、経済的損失が大きいと指摘し、外交においては経済的合理性を優先すべきとの見解を示しました。しかし、ネット上ではひろゆき氏の意見に対し、目先の経済的損失だけでなく、長期的な国益や国民の自信・自尊心といった精神的な「得」を重視する多様な視点から活発な議論が展開されています。この複雑な状況は、日本が国際情勢の中でいかに国益を守り、持続可能な発展を追求していくかという問いを投げかけています。