大分県別府市で2022年6月、男子大学生2人が死傷したひき逃げ事件で、道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で警察庁の重要指名手配容疑者に指定されている八田與一容疑者(28)について、県警は2日、殺人と殺人未遂容疑でも逮捕状を取ったと発表した。ひき逃げの公訴時効は7年で成立するが、殺人には時効がなく、遺族らが容疑の変更を求めていた。
県警によると、八田容疑者は同年6月29日夜、同市の県道交差点で信号待ちのバイク2台に軽乗用車で追突し、男子大学生(当時19歳)を殺害し、もう1人の男子大学生(22)も殺害しようとした疑いが持たれている。事件の直前に近くの商業施設敷地内で、死亡した大学生と容疑者には「接触」があったという。
県警は、両容疑を追加した理由について、現場にブレーキ痕がないことや、制限速度の時速40キロを大きく超える速度で運転していたこと、軽乗用車がバイクに追突する様子が分かる防犯カメラの映像なども踏まえて「殺意を裏付ける証拠が集まった」と説明。具体的な内容については「捜査に支障があるため回答を差し控える」とした。
容疑を巡っては、遺族や支援者でつくる団体が23年8月、殺人と殺人未遂容疑への変更を求める署名活動を始めた。警察庁は同年9月、「殺人と同様の凶悪性がある」として、ひき逃げ容疑では全国で初めて八田容疑者を重要指名手配容疑者に指定し、事件を捜査特別報奨金(上限300万円)の対象に追加。同月には遺族らが殺人と殺人未遂容疑で県警別府署に刑事告訴した。
遺族らでつくる団体も私的懸賞金(同500万円)を設定した。団体は昨年6月、計約7万7000筆の署名を県警に提出し、署名活動を続けていた。県警には5月末までに9600件の情報が寄せられた。
県警の福岡弘毅刑事部長は「他に類を見ない悪質、重大な事案だ。被害者や家族の無念を晴らすために、県警の総力を挙げて容疑者の検挙に努める」とのコメントを出した。