日本の少子高齢化、2024年出生数は過去最低の68.6万人に:データが示す人口動態の現実

少子高齢化が日本の社会構造に深刻な影響を与え続けています。特に近年、出生数の減少は加速の一途をたどり、2024年には年間出生数がピーク時の約4分の1まで落ち込みました。これに伴い、戦後のベビーブーム期に生まれた団塊の世代が後期高齢者となり、社会保障費のさらなる増大が喫緊の課題となっています。本稿では、景気の先行指標ともなりうる人口動態に焦点を当て、厚生労働省が公表した「令和6年(2024年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」の最新データに基づき、日本の置かれている厳しい現状を解説します。エコノミストの宅森昭吉氏の分析を交えながら、具体的な数値から見えてくる日本の未来を探ります。

2024年の出生数、初めて70万人を下回り過去最低を記録

2024年の日本の年間出生数は、統計開始以来初めて70万人を下回る結果となりました。厚生労働省が2024年6月4日に公表した概数によると、2024年の出生数は68万6,061人となり、前年の72万7,277人から4万1,227人(前年比▲5.7%)の大幅な減少を記録しました。これは、現在の統計方法が始まった1899年(明治32年)以降で最も少ない数です。過去最高の出生数を記録した1949年(昭和24年)の269万6,638人と比較すると、わずか約4分の1の水準にまで落ち込んでいます。わずか2年前の2022年に77万759人と80万人を下回ったばかりでしたが、減少のペースは加速しています。この出生数減少の背景には、経済的な先行き不安や、仕事と育児の両立の難しさなど、様々な要因が複合的に絡み合っていると考えられています。

日本の少子高齢化を示す概念図、統計データと向き合う人々日本の少子高齢化を示す概念図、統計データと向き合う人々

死亡数と自然減の状況

出生数が過去最低を更新する一方で、2024年の死亡者数は160万5,298人に上りました。これは前年の156万9,050人から3万6,248人の増加です。出生数から死亡者数を差し引いた人口の「自然減」は、91万9,237人となり、過去最大の減少幅となりました。これは、年間で90万人を超える人口が自然減によって失われたことを意味し、日本の人口減少にますます拍車がかかっている現実を示しています。

婚姻件数にわずかな回復の兆し、しかし継続性は不透明

少子化の進行を示す厳しいデータが並ぶ中で、わずかながら明るい変化も見られました。2024年の婚姻件数は48万5,063組となり、前年の47万4,741組から1万322組(前年比+2.2%)の増加に転じました。婚姻件数は長期的に減少傾向が続いており、この増加は低水準ながらも注目すべき変化と言えます。メディアではあまり報じられていないようですが、エコノミストの宅森昭吉氏は、この2024年の婚姻件数増加をもっと評価しても良いのではないかと指摘しています。しかし、2025年に入ると状況は再び厳しくなり、2025年1月から3月までの婚姻件数は13万1,332組と、前年同期比▲3.9%の減少ペースに戻ってしまいました。このため、2024年の増加が一過性のものとなる懸念も指摘されています。

合計特殊出生率は過去最低の1.15を記録

子どもの数を測る重要な指標である「合計特殊出生率」も、2024年には1.15となり、統計が利用可能な1947年以降で過去最低を更新しました。この指標は、15歳から49歳までの女性が一生の間に産むと見込まれる子どもの平均数を示します。ちなみに、合計特殊出生率の統計が開始された1947年(昭和22年)の数値は4.54であり、これが過去最高です。「出生率」とは、その年に生まれた人口1,000人あたりの出生数を指し、2024年の日本の出生率は5.7人でした。合計特殊出生率が2.07程度あれば、人口を維持できるとされていますが、現状はこれを大きく下回っています。

図表:日本の出生数と合計特殊出生率の推移(1947年以降、厚生労働省データ)図表:日本の出生数と合計特殊出生率の推移(1947年以降、厚生労働省データ)

将来推計人口との比較:現実は低位シナリオに近い

国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に公表した「日本の将来推計人口」では、様々な前提に基づいた将来の人口予測が行われています。基本シナリオである「出生中位・死亡中位」のケースでは、2024年の出生数を約75万5,000人、合計特殊出生率を1.27と予測していました。しかし、実際に公表された2024年の出生数は68万6,061人、合計特殊出生率は1.15となり、この中位シナリオの予測を大きく下回る結果となりました。実際の数値は、「出生低位・死亡中位」シナリオで予測されていた2024年の出生数約66万8,000人、合計特殊出生率1.12に近い状況となっています。このことは、日本の少子化が、標準的な予測よりもさらに速いペースで進行している現実を示唆しており、今後の人口減少が推計以上に厳しくなる可能性が高いことを浮き彫りにしています。

結論:加速する人口減少への対応が急務

2024年の人口動態統計概数は、日本の少子高齢化と人口減少が、すでに厳しいとされていた予測をも上回るペースで進行している現実を改めて突きつけました。出生数の過去最低更新、過去最大の自然減、そして合計特殊出生率の過去最低更新は、日本の社会経済システム、特に社会保障制度にとって極めて深刻な課題です。2024年の婚姻件数に一時的な増加が見られたものの、長期的なトレンドを変えるほどの勢いはなく、予断を許さない状況が続いています。これらのデータは、単なる数字の羅列ではなく、日本の将来に対する「景気の予告信号灯」として、政策担当者や国民一人ひとりが真剣に向き合うべき「ヤバすぎる現実」を示しています。この加速する人口減少トレンドを食い止める、あるいはその影響を緩和するための、より抜本的かつ効果的な対策の実行が、喫緊の課題であることは言うまでもありません。

参考文献


[Source link ](https://news.yahoo.co.jp/articles/707b8b134e58004ae259c1c52c1b6ac46f79e187)