リニア水問題「終結」報道に異議あり 静岡県境の地下水問題は未解決

リニア中央新幹線を巡る静岡県とJR東海の大井川水問題を巡る対立が節目を迎えたとの報道が相次いでいます。しかし、この問題は本当に解決したのでしょうか?専門家は、一部報道が事実と異なると指摘しています。

リニア中央新幹線 大井川水問題 静岡県専門部会 会議風景リニア中央新幹線 大井川水問題 静岡県専門部会 会議風景

静岡県専門部会での議論

6月2日、静岡県で第20回地質構造・水資源専門部会が開催されました。この会議では、リニア南アルプストンネルの静岡工区(8.9キロ)工事が、特に山梨県境付近において大井川流域の水資源に与える影響について話し合われました。

田代ダム案のリスク管理を了解

会議の結論として、静岡県はJR東海が提案する田代ダム案における「リスク管理」と「具体的なモニタリング計画」を了解したと発表しました。これにより、山梨県境付近の約10カ月間の工期で県外へ流出する湧水(最大500万トン)に対し、田代ダムの取水抑制で同量を大井川に放流するというJR東海の計画が専門部会で了解された形です。

「水資源議論終結」と報じる各紙

翌日、6月3日の朝刊各紙は一斉に報じました。「リニア 水資源議論終結」(中日)、「水資源の対話全て完了」(静岡)、「リニア水問題 JR東海との対話完了」(日経)など、静岡県とJR東海の間で続いた約11年間の「大井川の湧水の全量戻し」騒動が決着したかのような報道でした。

本当に「水問題」はすべて解決したのか?

しかし、これらの報道は事実と大きく異なる点がある、と指摘されています。

未解決の長野県境での地下水流出

何よりも問題なのは、専門部会で「長野県境」での県外流出問題がまったく議論されていないことです。これは山梨県境と同じく、リニア工事による地下水流出が懸念される箇所ですが、今回の会議では扱われませんでした。

静岡県担当理事の不可解な回答

会議後の囲み取材で、筆者が「長野県境付近の湧水問題は残っているが解決するのか」と確認した際、県の担当理事は「長野県へ流出する水は静岡県のもので、専門部会ではなく県とJRの協議で解決する」と回答。しかしこれは、専門部会が無意味だったことになり不可解です。翌日担当課に再確認したところ、「長野県へ流出する湧水の問題をどうするのか検討するのはこれから」と、対応が変わりました。これは、水資源に関する専門部会での議論がまだ終わっていない可能性を示唆します。

このように、静岡県とJR東海の間で「水資源の対話がすべて完了した」という報道がありましたが、実際には長野県境からの地下水流出問題は未解決のまま残されています。これは、専門部会で十分に議論されていない重要な論点であり、今後の協議でどのように扱われるのか注目されます。

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