東京・湯島で発覚:12歳タイ人少女への性的搾取事件、経営者ら逮捕

東京・湯島に位置する築53年の雑居ビルの一室で、12歳のタイ人少女が性的行為を強いられるという衝撃的な事件が明らかになりました。来日時に「迎えに来る」と告げた母親の言葉を信じ、過酷な状況に耐えていた少女は、結局母親が姿を見せることはなく、深い絶望の中で日々を過ごしていました。この事件は、近年国際的な問題となっている人身取引の一端を浮き彫りにしています。

経営者ら逮捕と事件の全容

11月4日、警視庁保安課は、問題のマッサージ店「リラックスタイム」の経営者である細野正之容疑者(51)を逮捕しました。容疑は、15歳未満の少女を雇用して働かせた労働基準法違反(最低年齢)です。さらに、同店のタイ国籍の女性従業員、ホームジャン・ギタヤポーン容疑者(33)も、マッサージ以外の性的なサービスを提供したとして風営法違反(禁止地域内営業)の疑いなどで逮捕されています。社会部記者によると、少女は今年6月下旬から約1カ月間、この種の店舗で働かされていたといいます。

性的搾取事件で逮捕された細野容疑者の自宅性的搾取事件で逮捕された細野容疑者の自宅

事件が明るみに出たのは9月16日、少女自身が港区の東京出入国在留管理局を訪れ、「タイに帰り、祖父母や妹に会いたい。中学校に通いたい」と助けを求めたことでした。この訴えから、国際的な人身取引の可能性が浮上し、ブローカー組織の関与を含め、現在も捜査が継続されています。この痛ましい事件は、少女の母国タイでも大きく報じられ、社会に衝撃を与えています。

貧困が招いた悲劇:少女の家族背景

少女の故郷は、タイ北部ペッチャブーン県のバンコクから340キロ離れた山あいの村です。警視庁の捜査幹部によると、少女は10歳の妹と共に母方の祖父母に預けられ、公立中学校に通っていました。父親は4~5年前に他界しており、母親が日本や台湾、シンガポールなどへの出稼ぎで生計を支えていたといいます。祖父母は体調不良で働くことができず、食費や電気代を含む生活費は、母親からの送金に全面的に依存していました。母親自身も借金を抱えており、家族は極めて貧しい生活を送っていたことが背景にあります。母親の仕事は主に性的なマッサージでした。

来日から搾取、そして救いを求めるまで

母親がタイに一時帰国した際、少女は「日本に行って仕事するよ」と告げられ、今年6月27日に15日間の短期滞在の在留資格で来日しました。母娘は共に東京に到着後、そのまま湯島のリラックスタイムに入店。そこで少女は初めて、マッサージの20分前になったら性的なサービスをするよう指示されるという仕事内容を知らされました。少女は嫌悪感を抱きながらも、タイの家族が困ってしまうという思いから、従わざるを得なかったといいます。

店に到着したその日は、母娘一緒に店内で寝泊まりしましたが、翌日、母親は姿を消しました。以降、7月29日までの33日間、少女は店の台所の隅に寝泊まりしながら、61人もの客から合計62万7000円を売り上げました。この売り上げはすべて細野容疑者に渡され、その半分が母親の知人名義の口座に振り込まれていたとされています。この事件は、貧困を背景にした児童の性的搾取と人身取引という深刻な国際問題に、改めて警鐘を鳴らすものです。