七五三母娘殺害事件 平成9年の悲劇、犯人の逮捕とその動機

平成9年(1997年)、北海道伊達市で発生した七五三の日(11月15日)に母娘が殺害された痛ましい事件。団地の自宅アパートで変わり果てた姿で発見された佐々木瑞穂さん(仮名、当時35歳)と、娘の萌香ちゃん(仮名、当時6歳)。なぜ、この祝いの日に、二人の命は奪われなければならなかったのか。事件発生から間もなく、捜査本部は犯人を特定し逮捕に至った。この凶悪な犯行の裏にあったのは、意外な人物の愛憎だった。

殺害事件、犯人は夫の不倫相手の妻だった

事件発生翌日の11月16日夜、北海道警伊達署の捜査本部は、佐々木瑞穂さんと萌香ちゃん殺害の容疑で、一人の女性を逮捕した。逮捕されたのは、伊達市の隣町、虻田町(現・洞爺湖町)に住む保養所の従業員、山村美枝子容疑者(仮名、当時55歳)だった。彼女は被害者である瑞穂さんの不倫相手であった男性の妻だった。

美枝子容疑者は、夫が瑞穂さんと不倫関係にあることで家庭が壊れることを危惧していたと供述。夫が持っていた瑞穂さん宅の合鍵を使いアパートに侵入し、瑞穂さんと萌香ちゃんを殺害したことを認めた。美枝子容疑者は、以前に瑞穂さんと直接会ったこともあったという。不倫相手とその幼い娘という、全く罪のない二人を殺害した犯行は、その残忍性から世間に大きな衝撃を与えた。

平成9年七五三母娘殺害事件、団地での悲劇に関連するイメージ写真平成9年七五三母娘殺害事件、団地での悲劇に関連するイメージ写真

裁判とその判決、検察の求刑と裁判所の判断

検察側は、不倫相手だけでなく、その幼い娘まで殺害した犯行について「近年まれにみる凶悪」であるとして、山村美枝子被告に対して無期懲役を求刑した。しかし、札幌地裁室蘭支部の田島清茂裁判長は、美枝子被告に懲役18年の判決を言い渡した。裁判長は、犯行自体は計画的で狂暴かつ卑劣であると認めつつも、殺意を抱いたきっかけには偶発的な側面も否定できないこと、また、事件後、美枝子被告が深く反省していることなどを量刑の理由として挙げた。検察の求刑から大幅な減刑となったこの判決は、様々な議論を呼んだ。

被害者と加害者の背景、そして悲劇の構図

被害者の佐々木瑞穂さんは、最初の夫も当時52歳と、かなり年上の男性に惹かれる傾向があったという。年上の相手は既婚者である可能性が高く、瑞穂さんに対する批判的な評判も一部にはあったとされる。最初の夫とは、萌香ちゃんが生まれてすぐに別居し、離婚が成立して間もない頃に山村美枝子の夫との交際を始めたという。

一方、加害者の山村美枝子被告は、長年連れ添った夫がまるで人が変わったように自分を蔑ろにし、人目もはばからず瑞穂さん母子の元へ足繁く通うようになったことで心を痛めていた。50代半ばの自分と、30代で若く美しい瑞穂さん。温泉施設で働く「おばちゃん」である自分と比べ、みじめな気持ちを募らせていった末の犯行だった。一連の出来事は、それぞれの立場での苦悩と、それが招いた取り返しのつかない悲劇の構図を浮き彫りにした。


参考文献:

  • 事件備忘録@中の人 著 『好きだったあなた 殺すしかなかった私』 鉄人社