2024年の「家族葬」の割合は50%だったことが判明した。その割合はコロナ禍よりやや低下したものの「一般葬」を大きく上回り、葬儀全体の半数を占める。だが、少人数の「家族葬」だからこそ、関係性がこじれた親族にとっては気まずい空間になるケースも少なくない。「一般葬」に比べてコスト面もさほどメリットがないとの声も挙がる。
■「一般葬」の割合は約3割に低下
終活関係のポータルサイト運営会社が発表した「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」の結果によると、「行った葬儀の種類」では「家族葬」が50.0%で、前回調査(2022年)に続いて最多だった。次いで「一般葬」が30.1%、「一日葬」が10.2%、「直葬・火葬式」が9.6%となった。
この調査は2年に1度実施され、今回は2022年3月~2024年3月に喪主(または喪主に準ずる立場)経験がある40歳以上が対象。インターネットを通じて約2000件の有効回答があったという。
「家族葬」が最多である理由について、運営会社は今回の調査結果では「都市化や核家族化などによる地縁の薄まりなどの社会背景が要因」であるとしながらも、「前回との比較では家族葬はマイナス5.7%、一般葬はプラス4.2%となり、アフターコロナを感じさせる結果」と解釈している。
■疎遠となった親族との密な空間に辟易(へきえき)
都内で自営業を営む遠藤潤さん(仮名、61歳)は今年1月、関西地方に住む兄から電話があり、93歳の父の死去を知った。2人兄弟だった遠藤さんは、父とは30年以上前から絶縁状態にあり、かろうじて兄の連絡先を知っている程度だった。
「昭和一ケタ生まれで亭主関白だった父のことは子どもの頃から苦手でした。結婚後に私の妻にも偉そうに強くあたることが何度かあって、それを発端に大ゲンカとなり、両親とは絶縁状態でした。兄とは仲が悪いわけではないですが、関係性は年賀状のやりとりぐらい。兄の声を聞いたのも30年ぶりでした」(遠藤さん)
遠藤さんは当初、葬儀に出席するつもりは全くなかったというが、兄から相続の手続きがあることを知り、90歳になる母の説得もあって、1人で告別式に参加することを決めた。
「正直なことを言えば、相続で入るお金のためでした。ここ数年、会社経営がうまくいってなくて、もらえるものはもらおうと。それに、父は上場企業の役員を務め、交流範囲が広かったので、葬儀にはある程度の人も来るだろうと思い込んでいました。でも、斎場に着いてびっくりしました。参加者は兄家族3人と母、自分の5人だけという『家族葬』でした」(遠藤さん)
遠藤さんの面影にある兄は30代だったため、60代半ばとなった兄の姿に驚いたが、兄の家族とは初対面だった。告別式の最中はもちろん、火葬後の精進落としでも5人で食事をともにしたが、気まずい雰囲気は拭えず、話は弾まなかった。
「特に兄の妻からすれば『お前は誰やねん』ということですよね。30年以上絶縁していて、介護も兄夫婦任せで、相続だけはするのかと。そういう視線を感じました。結局その場で相続の話などできず、ただただ重い雰囲気の密な葬式でした。やっぱり葬式は適度に関係性が薄い人も参加したほうが、人間関係もほぐれていいんじゃないですかね」(遠藤さん)
■香典収入の低さに葬儀後の煩わしさも