今日、「疲れたな」と感じる時、多くの人が栄養ドリンクに手を伸ばします。しかし、仕事終わりや休日にリフレッシュを試みても、なぜか疲れが取れずかえってだるさを感じる経験はありませんか?実は、一般的に信じられている疲労回復法の中には、全く効果がないどころか、むしろ疲労を蓄積させてしまうものがあるといいます。東京疲労・睡眠クリニック院長・梶本修身氏の著書『眠れなくなるほど面白い 図解 疲労回復の話』では、多くの人が間違えている疲労回復の「ウソ・ホント」が明かされています。この記事では、特に多くの人が頼りがちな栄養ドリンクに焦点を当て、その「疲労回復効果」に関する衝撃的な真実をお伝えします。
疲れた様子で栄養ドリンクを前に考える人物。栄養ドリンクの多くで強調されるタウリンは、実は疲労回復効果がないという専門家の指摘。(イメージ写真)
栄養ドリンクに科学的な「疲労回復効果」はない
「疲れた時にはまず栄養ドリンク」、そう思う人は少なくないでしょう。しかし、現在市販されている栄養ドリンクについて、人を対象とした科学的な検証で疲労回復効果が実証されたものは一つもありません。多くの製品で含有量が多くアピールされている「タウリン」についても、体内で必要量を合成できる成分であり、外部から大量に摂取しても疲労回復に直接的な効果はないとされています。
なぜ「効いた気」になる?カフェインとアルコールの作用
それでも栄養ドリンクを飲むと「なんだか元気が出た」「頭がスッキリした」と感じる人がいるのは事実です。これは、主にドリンクに含まれるカフェインの強い覚醒作用や、微量のアルコールによる一時的な気分の高揚によるものだと梶本氏は指摘します。つまり、疲労そのものが回復したのではなく、脳が刺激されて一時的に眠気やだるさを感じにくくなっているだけなのです。
危険な「疲労隠蔽」と蓄積リスク
徹夜明けのプレゼンや試験勉強など、一時的に集中力を高めたい時や、どうしても乗り切りたい場面で栄養ドリンクを「目覚まし」代わりに使う効果を否定するわけではありません。ただし、日常的に頼りすぎることは非常に危険です。栄養ドリンクによる一時的な高揚感や覚醒作用は、体本来の「疲れた」という危険信号を覆い隠してしまいます。これにより、実際には疲労が蓄積しているにも関わらず、回復したと錯覚してしまうのです。過剰摂取は感情のコントロールを失わせたり、依存症のリスクを高めたりする可能性も指摘されており、海外では安全性の調査が行われている国もあるほどです。長期的に見れば、栄養ドリンクへの依存はかえって疲労回復を妨げ、健康を害する原因となりかねません。
多くの人が当たり前だと思っている「疲労回復法」の中には、実は科学的な根拠がなく、かえって体に負担をかけるものがあります。特に栄養ドリンクは、疲労の根本的な解決にはならず、一時的な気分の高揚や覚醒作用で疲労を隠蔽し、知らず知らずのうちに疲労を溜め込んでしまうリスクを伴います。本当の疲労回復のためには、安易な方法に頼るのではなく、体の声に耳を傾け、適切な休息や根本的な対策を取ることが重要です。
【参考】
- 梶本修身(2023)『眠れなくなるほど面白い 図解 疲労回復の話』日本文芸社