ブラジルを訪問中の秋篠宮家の次女佳子さまは7日午後(日本時間8日未明)、日本語教育に取り組むサンパウロの私立学校「松柏(しょうはく)・大志万(おおしまん)学園」を訪れ、生徒らと交流された。皇室の方々の同校訪問はこれが初めてとなる。
ブラジル・サンパウロの松柏・大志万学園を訪問し、マドエノ校長(右)と話される佳子さま
学園では生徒らが合唱やダンスで佳子さまを歓迎した。佳子さまは、生徒の保護者が手作りしたブラジルの伝統菓子「ダジーニョ・デ・タピオカ」(タピオカとチーズの揚げ物)などを試食し、「本当においしいです。見ているだけでも楽しい気持ちになります」と感想を述べられた。
学園の特色と教育理念
佳子さまが訪れた松柏・大志万学園は、日本語や日本文化の教育に力を入れている私立学校だ。校長を務める日系3世のマドエノ・マユミさん(65)は、「ブラジルと日本、両方の良い面を兼ね備えた子供を育てたい」という教育理念を掲げている。
約430人の生徒が在籍しており、その約7割を日系人が占める。幼児部の1歳半から中学3年までの幅広い年齢の子供たちが学んでいる。世代交代が進み、家庭内で日本語を話す機会が少ない子供たちが多い中、自らのルーツである日本の言葉や文化を継承させたいという保護者の強い思いが学園を支えている。
ブラジル・サンパウロの松柏・大志万学園にて、マドエノ校長(左)の案内を受ける佳子さま
同校では、ブラジルの正規教育課程に加え、週3回、日本語の授業が必修となっている。また、茶道、書道、将棋、生け花、合気道といった日本の伝統文化や技を学ぶ特別授業も提供されている。「時間を守る」「相手を思いやる」といった日本らしい価値観を伝えながらも、ブラジル人としての個性を自由に表現することの大切さも同時に教えている。
学園設立の背景と皇室との繋がり
松柏・大志万学園の始まりは、マドエノ校長の母マリコさん(96)が1952年に開設した日本語学校にさかのぼる。「先祖から受け継いだ言葉や文化が消えてしまう」という危機感から、その活動を発展させ、1993年にブラジル政府公認の学校として現在の学園が設立された。
学園では毎年、運動会の招待状やクリスマスカードを日本の天皇陛下宛てに送ってきた。しかし、皇室の方々を直接迎えるのは、今回の佳子さまの訪問が初めての出来事となった。マドエノ校長は、皇室からの初めての訪問という「人生で一度あるかないかの機会を与えられた」ことへの感謝を述べ、「この貴重な経験はきっと子供たちの将来の糧になるはず」と、今回の訪問の意義を語った。
佳子さまの松柏・大志万学園への訪問は、遠く離れたブラジルで日本の言葉と文化を守り伝えている日系社会の取り組みを称賛するとともに、生徒たちにとって自身のルーツを誇りに思うきっかけとなる忘れられない経験となった。
参照: 読売新聞